月面に近づくアポロ12号の月着陸船(Wiki)
どうやってこのカラー写真を撮影したのか?
月で発見された謎の地下空間! 人類が「月面基地」を建設できる可能性も!?
tocana.jp/2015/04
月面に地下空間がある? まるでSFのような話だが、決してウソ話ではない。どうも本当に地下空間がありそうなのだ。
3月20日に「DailyMail」で掲載された記事によると、月のまわりを周りながら月面を観測しているルナ・リコネッサンス・オービター(Lunar Reconnaissance Orbiter、以降LROと表記)の写真から「ピット」と呼ばれる陥没孔が見つかったという。
これは、月の地下に空間があって、天井が陥没してできたと考えられている。
a. 月には地球を覆うような大気がなく、隕石は猛スピードで突っ込んでくる。
b. また有害な放射線も容赦なく降りそそぐ。
c. 昼と夜との寒暖差も激しい。
しかし、もしも月に天然の地下空間があれば、安全で快適な月面基地を建設することが可能ではないか。
上の写真は、LROが月の上空から撮影したものだ。
これが地下の空洞に天井が落ち込んでできた「ピット」と呼ばれる陥没孔。
月面には隕石が衝突してできた隕石孔(クレーター)がたくさんあるが、どうしてこれが陥没孔だとわかるのか? それは穴の周囲に盛り上がった部分がないからだ。
隕石孔や火山の火口であれば、中にあった岩塊や土砂が、穴のまわりに積もっているはず。しかしこの写真の穴にはそれがない。垂直にストンと落ちている。
無数にある隕石孔の中からどうやってピットを探し出したのか?
目を皿のようにして月面を探しまくったわけではない。アリゾナ州立大学のロバート・ワグナーの研究チームが、日本の月面探査衛星「かぐや」やLROの膨大な量の高画質写真をコンピュータで処理して直径5mから900mの大小200を超えるピットを見つけだしたのだ。
ピットは溶岩トンネルにできる
ではどうして地下に空洞ができるのか? ピットは、隕石孔の中にたまった溶岩や、「海」と呼ばれる溶岩地帯(今は冷え固まっている)で発見されている。
具体的には10億年より新しいと考えられている隕石孔29個の中にたまった溶岩に200か所ほど、海の中8か所でピットが発見されている。
溶岩が流れる時、表面はすぐに冷えて固まってしまうが、内部は保温されて長期間熱く融けたままになる。その後、内部の融けた部分が流れ去ってしまうと空洞が残る。
これを「溶岩トンネル」とよんでいる。
小さなものは「溶岩チューブ」とも言う。写真では、溶岩トンネルに沿ってピットが点々と続いたり、トンネル全体が陥没している様子を見ることができる。
いよいよ月面基地開発か??
これなら、月の洞窟で暮らせるかも…。アリゾナ州立大学のロバート・ワグナー氏も同じことを考えている。
天窓から奥へ数メートル入ると宇宙飛行士にとって安全な場所になるそうだ。人類の月面での活動に有益だと氏は述べている。そこでは、
1、有害な放射線
2、小さな隕石の衝突
3、昼と夜の寒暖差
から逃れることができると氏は述べるが、どういう意味があるのか見ていこう。
「1」地下空間では分厚い岩石の壁で宇宙からやってくる放射線の脅威から逃れることができる。
「2」月には大気がないので隕石は秒速数キロメートルと、ライフル銃の弾丸なみのスピードで飛んでくる。そんなものが人や構造物に当たったらひとたまりもないが、地下空間なら逃れることができる。
「3」月は、昼と夜の寒暖の差が激しい。昼間は123℃の灼熱地獄。夜はマイナス233℃と液体窒素までもがカチカチに凍るほどの極寒地獄。地下空間に入るとこの温度差は和らげることができるようだ。
はたして溶岩トンネルの中に基地ができるのだろうか? 今後の探査が期待される。
(文=山本 睦徳)