グーグルとグラクソがつくる、730億円の「バイオ電子薬」企業
グーグルの親会社アルファベットがもつヴェリリー・ライフ・サイエンシズと、英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)が新会社「ガルヴァーニ・バイオエレクトロニクス」を設立した。
体内に埋め込み、モニタリングや治療を行う小型機器を開発する。
TEXT BY JAMES TEMPERTON
TRANSLATION BY HIROKI SAKAMOTO, HIROKO GOHARA/GALILEO
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WIRED (UK) 2016.08.03 wired.jp WED 17:00
グーグルの親会社であるアルファベットが所有するヴェリリー・ライフ・サイエンシズ(前グーグル・ライフサイエンシズ)と、英製薬大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)が、バイオエレクトロニクス(生体電子工学)に基づく治療を研究・開発・商品化するための新会社、ガルヴァーニ・バイオエレクトロニクスを設立した。
新会社は、英ハートフォードシャー州スティーヴニッジに本社を構える。
新会社は、GSKとヴェリリーから、今後7年で最高5億4,000万ポンド(約730億円)の出資を受ける。ガルヴァーニの株式をGSKが55パーセント、ヴェリリーが45パーセント保有することになる。
世界初の「バイオエレクトロニクス治療」
ガルヴァーニが開発を目指すのは、体内の神経信号をモニタリングできる埋め込み式の小型機器だ。
さらに、こうした機器を使用することにより、関節炎や糖尿病、ぜんそくなど多くの慢性疾患に見られるインパルス(活動電位)の不整や変化といった問題にも対処できるようになるかもしれない。
慢性疾患によって引き起こされる神経系信号の異常を、電気インパルスを使って修正するわけだ。
完成すれば、この生体電子工学機器は、錠剤と同じほどのサイズになり、体内に埋め込まれることになるだろう。
一度限りの手術で効果が何十年も続き、定期的な投薬治療の必要がなくなる可能性もある。
ただし、機器に動力を供給し続け、体内で何年もの間、確実に機能できるようにしなければならない、という課題もガルヴァーニは抱えている。
初期の研究では、小型の精密機器が、
a. 炎症性や代謝性、
b. 内分泌系の疾患(2型糖尿病を含む)
に対処できるという臨床的証拠を確立することに焦点が絞られる。
その後、2023年ごろまでに、世界初となる生体電子工学治療の承認を規制当局に求める計画だ。
約30人の科学者からなるチームは、英国にあるガルヴァーニ本社と、ヴェリリーの本拠であるサンフランシスコにある別の研究施設で研究に取り組むことになる。
ガルヴァーニという名前は、18世紀イタリアの科学者で医師、哲学者でもあったルイージ・アロイジオ・ガルヴァーニにちなんで名づけられた。
彼は1771年、電気火花を当てると死んだカエルの筋肉が痙攣することを発見。これが生体電気研究の端緒となり、今日の神経系の電気パターンや信号の研究に繋がっている。
GSKとのパートナーシップは、アルファベットが医療技術に対して行う最新の大型投資だ。ヴェリリーは2014年、スマートコンタクトレンズの開発で、スイスの製薬会社ノバルティスと提携を結んだ。埋め込み式のグルコースセンサーを搭載し、糖尿病のモニタリングに役立てられるものだ。
さらにヴェリリーは2015年12月、ジョンソン・エンド・ジョンソン傘下の医療機器メーカーエチコンと提携して、次世代の手術ロボットや医療機器の開発を目指すヴァーブ・サージカル(Verb Surgical)を設立している。