怪しげなシュタイナーさん言わく、うつ病などの頭の病気には下部人間たる腸を疑え。過敏性大腸炎などの腸の病気の時は上部人間たる脳を疑え!教え子のお母さんも若くしてパーキンソン病にかかり、最後は癌でなくなった。
パーキンソン病と腸内細菌とのつながりが明らかに
2017年3月10日(金)15時15分 newsweekjapan.jp
<パーキンソン病に関する研究は、従来、脳や神経系に注目したものが多かったが、近年、腸内細菌からその原因を追究しようというアプローチがみられるようになってきた>
パーキンソン病は、中脳の一部を占める神経核の黒質が減少し、この神経が働く際に分泌される神経伝達物質ドーパミンが不足することによって、手足のふるえや筋肉のこわばりがおこったり、動きが遅くなったり、身体のバランスが悪くなったりするもの。
米パーキンソン財団によると、パーキンソン病患者は世界で1,000万人以上にのぼり、日本でも2014年10月時点の患者数が3万2,800名と推計されているが、その原因は未だに解明されておらず、根本的な治療法や予防法が確立されていないのが現状だ。
パーキンソン病に関する研究は、従来、脳や神経系に注目したものが多かったが、近年、パーキンソン病の初期症候として便秘を訴える患者が多いことに着眼し、腸内細菌からその原因を追究しようというアプローチがみられるようになってきた。
米アラバマ大学バーミンガム校の研究チームは、2017年2月、医学誌『Movement Disorders』においてパーキンソン病と微生物とのつながりを示す研究結果を発表した。
この研究では、ニューヨーク、シアトル、アトランタのパーキンソン病患者197名の腸内細菌を、健常者130名のものと比べて分析。
その結果、これら2つのグループにおいて、細菌の数や種類に違いが認められただけでなく、薬や有害物質といった様々な生体外物質への代謝反応にも違いがあることが明らかになった。
パーキンソン病患者に投与される薬が細菌に何らかの影響を及ぼしているか、薬物療法への反応に腸内細菌が作用しているものと考えられている。
腸内細菌とパーキンソン病との関連については、2016年12月、カリフォルニア工科大学の研究チームでも明らかにしている。
この研究結果では、腸内細菌の数や種類の変化がパーキンソン病の特徴的な症状のひとつである非運動症状を引き起こしている可能性があることが示された。
研究チームでは、この研究結果を腸内細胞と炎症と脳との関係を探るうえでの第一歩と位置づけている。
これらの研究結果は、パーキンソン病のような神経変性疾患がヒトの体内にある微生物と何らかのつながりを持っている可能性を示すもの。
両者の複雑なつながりを完全に解明するまでには、さらなる研究を要するが、新たな治療法や予防法への手がかりとして、注目に値する研究成果といえるだろう。
パーキンソン病発症のリスクは「腸内」にあり:研究結果
パーキンソン病は、脳の一部に異常が起こり体の自由が利かなくなってしまう難病だ。
近年腸内フローラとの関係が注目されているが、オーフス大学エリザベス・スヴェンソン博士がヒトを対象とした、大規模な臨床知見を発表した。もしかすると「便秘」が早期発見のマーカーになるかもしれない。
wired.jp/2015/08/09
TEXT BY SANAE AKIYAMA
パーキンソン 病は、脳の黒質に異常が起こりドーパミンが減少し、筋肉までの神経伝達がうまく機能しなくなる神経変性疾患のひとつだ。
この疾患の始まりが〈脳内〉ではなく、〈腸内〉からだといわれたら、耳を疑うのではないだろうか。
近年のパーキンソン病の腸内環境との関係性を追求する研究は、この難病の根本的な治療法が変わる可能性を示唆している。
デンマークのオーフス大学のエリザベス・スヴェンソン博士は、パーキンソン病の発症リスクに関する新たな研究成果を米国ジャーナル誌「Annals of Neurology」で発表した。
スヴェンソン博士は、この論文のなかで1970~1995年までに、消化性潰瘍治療の一環として「迷走神経切離術」を受けた患者たち15,000名のデータを解析し、
「この手術を受けた患者たちのパーキンソン病発症率が、手術を受けていない人達と比べてかなり低かった」
と報告した。
これはつまり、 脳と臓器を繋ぐ迷走神経を切断することによって、思いもよらず「パーキンソン病の予防」になっている可能性があるということだ。
迷走神経は脳と内臓をつなぐ重要な神経で、主に胸腹部の内臓を支配する機能としては、副交感神経として働く。
この迷走神経がカギになり、腸内から脳内へ病原体が移行し、パーキンソン病の発症に起因している可能性がある。
今回行われた疫学的調査は、実際にヒトを対象としたものでは「過去最大規模」のものだ。
「わたしたちの研究によると、完全迷走神経切断手術を受けた患者は、20年後のパーキンソン病リスクが半分になります。しかし、迷走神経の一部のみの切断をした患者ではこの予防傾向は見られませんでした」
と、スヴェンソン博士はリリースで述べている。
「これは病気の発症過程において、脳に到達し影響を及ぼすには、迷走神経が少しでも繋がっているかどうかに大きく左右される、というわたしたちの仮説にも当てはまります」
(スヴェンソン博士)
しかし、パーキンソン病における「迷走神経による脳と腸の直接的な繋がり」が示されたわけだが、どのようにしてパーキンソン病が腸内で最初に発症するのかはまだ明らかではない。
これまでの報告でも、いくつかの動物実験で脳と腸の関わりが示唆されていたものの、その結果に多くの研究者らは懐疑的なままだという。
約1,000人に1人の割合で発症するこの病気は、50~60歳での発症率が最も多く、欧米では男性が多い(日本では女性のほうが多いと報告されている)。
脳内のドーパミン神経細胞が失われていくせいで、手足のふるえ、筋肉のこわばり、歩行が困難、バランスが維持できないなど、さまざまな症状が現れる。
パーキンソン病の最初の症状は「便秘」
しかしこれらの症状が現れる何年も前から、患者らは慢性化した消化器系の症状に悩まされることが多いようだ。
「パーキンソン病患者の多くは、診断される何年も前から便秘の傾向があるのです。今回の研究成果は、迷走神経と消化器系の病状を繋ぐ〈早期診断マーカー〉として利用できるかもしれません」
とスヴェンソン博士は言う。
腸内細菌の最新研究では、パーキンソン病患者の便は、食物繊維や炭水化物の分解酵素が強いプレヴォテラ(Prevotella)属細菌が、健常者と比べて8割近く減少する傾向があるという。これが新たな診断方法に繋がる可能性も示唆されている。
いずれにせよ、今回の研究がパーキンソン病の原因究明の重要な鍵になるだろう。スヴェンソン博士はこの結果をふまえ、何がパーキンソン病のリスクファクターとなって発症の引き金をひくのかを突き止め、ゆくゆくはパーキンソン病の予防ができるよう、研究に力を入れていきたいと話している。
パーキンソン病を促進する腸内細菌叢
(12月1日号Cell掲載論文)aasj.jp/news/watch/6147
腸内細菌叢がもう一人の自己として、私たちの健康に重要な働きをしていることはよくわかっているつもりだが、自閉症や躁鬱病などの脳機能にまで影響するという論文が出てくると、受けを狙いすぎているのではとあまりのフィーバーぶりが心配になってくる。
事実今日紹介するカリフォルニア工科大学からの論文のタイトルを見たときも同じ印象を受けた。
タイトルは「Gut microbiota regulate motor deficit and neuroinflammation in a model of Parkinson’s disease(腸内細菌叢はパーキンソン病モデルでの運動障害と神経炎症を調節する)」で、12月1日号のCellに掲載されている。
腸内細菌叢研究がブームになる要因は、細菌が全く存在しない無菌マウスを利用できるようになったことで、様々な病気モデルマウスを無菌状態と、菌が存在する状態で飼育して起こってくる変化が見つかれば、話が成立する。この研究では神経細胞にαシヌクレン遺伝子を過剰発現させたパーキンソン病モデルマウスを無菌と有菌状態で飼育、両者を比較することから始めている。
期待通り、3種類の運動機能を調べると、細菌叢が存在するマウスでは機能低下が著しく、また大脳でのシヌクレンの蓄積が更新し、同時に大便の量が低下することを発見している。すなわち、細菌叢の作用によりシヌクレン蓄積が促進し、また腸の機能も低下するという結果だ。
あとはメカニズムを調べればいい。まず、無菌状態と比べて細菌叢があると最も影響を受けるのがミクログリア細胞で、無菌状態では炎症活性が低下し大きさが小さくなっている。すなわち、細菌叢が作用するミクログリアを介する炎症がシヌクレン蓄積を促進するというシナリオだ。この最終原因として、最終的に細菌叢が分泌する単鎖脂肪酸がミクログリアの活性化と運動機能不全に関わることを示している。
最後に、実際のパーキンソン病患者さんの細菌叢が正常人と比べて偏りがあること、パーキンソン病患者さんの便を無菌マウスに移植して運動機能を調べると、機能低下が激しいことを示している。
結論的には、パーキンソン病自体が腸内細菌叢を変化させ、この変化がより運動機能低下に関わるという結果になる。抗生物質で、菌をすべて叩けばシヌクレンの蓄積は抑えられるが、長いスパンで考えると現実的な治療ではない。残念ながら単一の細菌を移植したノトビオティックな実験系を使っていないので、どの細菌が原因となる単鎖脂肪酸を分泌するのか特定できていない。かなりフラストレーションの残る論文だ。私がレフリーなら、菌の特定までやって始めてアクセプトする。他にも、このモデルはαシヌクレンをThy1分子のプロモーターで発現させているが、リンパ球には発現していないのか気になる。もし発現しておれば、炎症や腸管の障害については他のシナリオも考えられる。おそらく、普通はCellに掲載されることはない論文に思える。「事実は小説より奇なり」と意外性だけを狙ったらこんな論文になると思う。
とはいえ、もしこの話が本当なら、パーキンソン病の進行を遅らせる可能性はある。ノトビオティックマウスを用いた地道な研究を望みたい。