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トランス脂肪酸: 米国で禁止の動き 日本では表示義務なし

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トランス脂肪酸: 米国で禁止の動き 日本では表示義務なし

毎日 2014年01月16日 18時25分(最終更新 01月16日 18時45分)
 
 サクサクした食感やベタベタしない揚げ物は食欲をそそるが、その調理に使われるマーガリンや油にはトランス脂肪酸が含まれる。
 
*個人的にはパンや揚げ物やレトルトカレーの牛脂に苦手である。
 
健康へのリスクが十数年前から指摘され、昨年11月には米食品医薬品局(FDA)が段階的に禁止する方針を打ち出した。国内の食生活は大丈夫なのか。
 
【瀬尾忠義】
 
 ◇ マーガリンなどに含有/日本では表示義務なし/脂質過剰摂取は避ける

 「食品に使う上で安全とは認められない。(規制によって)米国内で年間2万件の心臓発作を予防し、7000人の死者を減らせる」
 
FDAはトランス脂肪酸「禁止」の意義を、このように説明している。
 
食生活に気を配っている人は「ようやく……」と思われたかもしれない。日本でも10年以上前から健康への影響が懸念され、週刊誌などが「狂った油」といった刺激的な見出しとともに危険性を伝えてきたからだ。
 
 脂質の一種であるトランス脂肪酸は、牛や羊の内臓で微生物によって生成され乳製品や肉に含まれる反すう動物由来のものと、工業由来のものに大別される。主に問題とされてきたのは後者だ。
 
 植物油を製造する際、油の臭いを取り除くために高温で加熱処理したり、液体の植物油に水素を加えて常温で固まりやすい「硬化油」に加工したりする過程でトランス脂肪酸は生成される。
 
含有量が多いのは、油脂含有率が
 
イメージ 1▽80%以上のマーガリン
▽80%未満のファットスプレッド
パンやビスケットなどの原料や、
ポテトを揚げる調理油として使われるショートニング
コーヒーに入れる液状のクリーム
 
−などだ。
 
 トランス脂肪酸は大量に摂取するとLDL(悪玉)コレステロールを増やし、狭心症や心筋梗塞のリスクを増大させるほか、肥満やアレルギー性疾患との関連も指摘されている。
 
米国では、1日当たりのトランス脂肪酸の摂取量が5・04グラムの人は0・84グラムの人に比べ、心筋梗塞のリスクが1・94倍に高まるとの研究がある。認知症や炎症性腸疾患を誘発するとの報告もある。
 
 国立医薬品食品衛生研究所の安全情報部第3室長を務める畝山さんは
 
「トランス脂肪酸は天然の食材にも含まれるため、摂取量をゼロにするのは不可能です。FDAの規制は硬化油のマーガリンやファットスプレッド、ショートニングが主な対象。直ちに使用禁止ではなく猶予期間を設け、最終的にFDAの承認がないと食品に添加できなくするとみられます」
 
と解説する。
 
日本人のトランス脂肪酸摂取量は1日平均0・7グラム、総エネルギー量の0・3%だ(内閣府食品安全委員会の2006年度推計)。世界保健機関(WHO)が目標とする1%未満を満たしている。一方、米国は1990年代半ばに1日5・8グラム、総エネルギー量の2・6%と高かったが、危険性が叫ばれたために03年には4・6グラム、12年には約1グラムに減った。
 
 米国が06年に含有量の表示を義務化したのを受け、日本国内のメーカーやファストフード産業はトランス脂肪酸を減らす取り組みを進めてきた。
 
表の含有量は06年当時の商品の値なので、現在とは異なる可能性がある。
 
イメージ 2
 
実際、日本マクドナルドは07年にフライドポテトを揚げる油を変え、含有量を6分の1に減らした。ミスタードーナツも07年にドーナツ1個当たり平均1~1・5グラム含んでいたトランス脂肪酸を0・25グラムにカット。
 
セブン−イレブンはオリジナル商品の原材料を見直し、人気の菓子パン「いちごジャム&マーガリン」の含有量は05年に100グラム当たり平均1・86グラムだったが、12年には0・15グラムに。各社は「おいしさと健康を両立させている」と口をそろえる。
 
 「以前から脂肪の取り過ぎが問題だった欧米と違い、日本人は元々の摂取量が少ない。通常の食生活をしている限り健康への影響は小さいでしょう」
 
畝山さんはそう解説する。逆に
 
「脂質はたんぱく質、炭水化物と並ぶ三大栄養素の一つでホルモンや細胞膜の材料にもなる。トランス脂肪酸を避けようと神経質になって脂質を極端に減らせば、かえって健康を損ないかねません」
 
と心配する。
 
 ならば「安全」と言えるのか。食品安全委の資料によると、02~03年に30歳以上の225人の食事を調べたところ男性の5・7%、女性の24・4%のトランス脂肪酸摂取量がエネルギー比1%を超えたとの報告がある。
 
 日本ではメーカーに含有量の表示義務がないことも問題だ。日本パン工業会は食パン、菓子パン、総菜パンの含有量の最大値と最小値を公表しているが、個々の商品については分からない。
 
マーガリンやスナック菓子など他食品への広がりも十分とは言えない。消費者庁は15年春施行を目指す「食品表示法」で、加工品でのトランス脂肪酸の含有量表示の義務化を検討しているが、「必要性は低い」として見送られる公算が大きい。
 
身近な食品のトランス脂肪酸量を05年に調べ、公表したNPO法人「食品と暮らしの安全基金」代表の小若順一さんは
 
「企業が公表している含有量は実測値ではなく計算値かもしれず、正確かどうかは分からない。消費者の利益を考えるならば国が含有量の規制値を設定し、値を上回る商品は排除すべきです」
 
と語る。
 
 「幼い頃からファストフードやコンビニエンスストアの商品を口にしてきた若者はトランス脂肪酸のリスクを蓄積しており、数十年後に被害が出るかもしれない。学校給食などでは規制すべきです」
 
環境や食の問題を考える運動に取り組み、東京都調布市で自然食品店「みさと屋」を営む藤川泰志さんは訴える。
 
 「トランス脂肪酸については企業の対策が進み、現在は問題ない。しかしファストフードやコンビニで買ったお菓子ばかり食べるのは不健康だ。脂質の過剰摂取を避け、栄養のバランスを考えた食生活が健康につながるのです」
 
と話すのは人間総合科学大客員教授(脂質栄養学)で日本油化学会会長を務めた島崎弘幸さんだ。
 
 見えにくいリスクだからこそ、日常の食生活が重要のようだ。
 
 
 ショートニング」とは、どのようなものですか。また、「トランス脂肪酸」というものが含まれていると聞きますが、これについても教えてください。
 
回答    maff.go.jp/j/heya/sodan/0908/03
 
ショートニングとは、精製した動物油脂、植物油脂などを主原料とし、これに10~20%程度の窒素ガスや炭酸ガスなどを吹き込みながら練りあわせて製造した無味無臭の食用油脂です。
 
固体状のもの、クリーム状のもの、粉末状のものなどがあり、19世紀末のアメリカでラードの代用品として生まれ、ラードコンパウンド(ラードの代用品)とも呼ばれていました。用途としてはクッキーやビスケットといった焼き菓子、パン、アイスクリーム、フライ用の揚げ油などに用いられています
 
「ショートニング」という名称は、パン、ビスケットなどをサクサクさせるという意味の英語(shorten)からきていて、ショートニングを焼き菓子に使用すると、文字通りサクサクとした軽い食感を出すことができます。
 
トランス脂肪酸とは、トランス型二重結合という構造を持つ不飽和脂肪酸の総称です。トランス脂肪酸は、植物油など液体状の油脂から、マーガリンやショートニングのような固体状の油脂を製造する加工工程で生成するほか、牛乳や牛肉など反すう動物由来の脂肪にも天然に含まれているものです。
 
トランス脂肪酸の過剰摂取はある種の心疾患のリスクを高める要因となることが示されており、世界保健機関(WHO)ではトランス脂肪酸の摂取量の上限目標値を設定しています。これまで日本で行われたトランス脂肪酸の摂取量調査では、トランス脂肪酸の平均的な摂取量はWHOが設定した目標値を大きく下回っており、いろいろな食品をバランスよく食べればトランス脂肪酸による健康リスクは低いと推定されます。
 
農林水産省では、現時点で得られている科学的な知見、データから、日本の場合には食品中のトランス脂肪酸についてすぐに規制を行う必要性は低く、食生活の中で脂肪の取りすぎを控えることがより重要と考えています。トランス脂肪酸に関するさらに詳しい情報は、農林水産省ホームページをご覧下さい。
 

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