増えぬ医学部「地域枠」なぜ 公立大で最少の京都府立医大
2018年04月07日 08時13分 京都新聞
地域医療に従事する意向がある地元出身者などを優先的に入学させる大学医学部の「地域枠」で、京都府立医科大(京都市上京区)の枠が自治体設置の公立医大8校の中で最少の7人となっている。
全国的には枠を拡大し、医療過疎地へ医師を送る自治体も目立つが、府は
「府立医大は全国の医療充実に貢献している実績がある」
と増員に慎重な姿勢を崩さない。
医師偏在が問題になる中で地域枠は、国が2008年度、導入する医大に定員増を特別に認めたことで急速に増え、10年間で約9倍になった。
札幌医科大は定員の8割を地域枠に充てるなど、特に地域医療を担う自治体設置の公立大が積極的に活用している。
府は府内の中高出身者などを対象に、在学6年間で奨学金計1080万円を貸与し、研修後に6年間、南丹市以北の医療機関に勤務すれば返済免除にしている。
ただ枠は医学部定員の約6%で、地域枠を導入する国公立・私大の計71大の17年度平均(20%)より低く、国公立45大では東京医科歯科大(4人)、名古屋大(5人)に次いで少ない。
府立医大によると、17年度入学者のうち府内の高校出身者は43%で、例年も3~4割程度という。
府内病院で研修を終えた卒業者が、府内の病院に勤務した割合は68%(16年度までの3年平均)と、全国平均(85%)より低い。
地域枠を増やせば京都府北部が悩む医師不足が改善する可能性がある。
府医療課は
「奨学金は府民の税金で予算上の問題がある」
とした上で、
「地域医療に加え、全国の病院で活躍する医師の養成も重要。定員が増えないまま地域枠を拡大すると、一般受験者の門戸を狭めてしまう」
と説明する。定数増が認められた7人分の地域枠を充て、一般枠100人を変えていない。
京都府内の病院が研修医から人気が高いことも理由という。他府県からの希望者が多く、国から都道府県に割り当てられる研修医定員は毎年、ほぼ満員になる。
研修医流出に悩む他県から削減を求める声があるといい、
「地域枠を増やしても、府内で研修できない恐れもある。研修医定員の死守が先決」
(医療課)という。
府の10万人当たりの医師数は314・9人(16年12月末現在)と全都道府県で2番目に多いが、京都市周辺の京都・乙訓医療圏に集中し、他の医療圏は全国平均以下。地域間格差が顕著で、市町村からは府に医師派遣を求める声が強い。
「大学の自治」で医大の医師には知事の人事権が及ばない難しさもあるが、8日の府知事選投開票を控え、府民は府立医大の役割をどう考えるのか。