斬新、透ける清水焼 木材由来の新素材で新製法開発
2018年08月30日 11時55分 京都新聞
木材由来の新素材「セルロースナノファイバー(CNF)」を用いた京焼・清水焼の新たな製法を、京都市産業技術研究所や第一工業製薬、陶磁器製造販売の陶葊(京都市東山区)が開発した。
器の中身が透けて見えるなど、従来にない質感の製品に仕上がり、不良品が出にくいのが特徴という。
陶葊が来春をめどに商品化し、市産技研などは工業セラミックスの製造への応用を目指す。
陶磁器作りは材料に粘土、成形にろくろを使うのが一般的だが、新製法は鉱物の長石を主原料に用いて幅3~5ナノ(10億分の1)メートルのCNFを少量添加し、石こう型に流し込んで固める「鋳込成形」で器の形にする。
焼結した後に出来上がる器は、つるりとした質感で光を通さない従来の京焼・清水焼と異なり、表面のつやが少なく、光の透過性が高いのが特徴だ。
粘土に比べて長石は乾きにくいため、従来の作り方では、型から外す際に欠損が生じやすかった。
第一工業製薬がCNFの量産技術を持ち、市産技研ともセラミックスの鋳込成形でCNFを添加剤に用いる共同研究を行っていたことから、今回の新製法に結びついた。
CNFが水分を吸収するため型から取り外しやすくなり、従来は半分以下だった歩留まりが100%近くに向上したという。
陶葊の土渕善亜貴社長は
「陶磁器の販売が落ち込む夏場に、中身が透けて涼感を演出できる商品として売り込めるのでは」
と話しており、来年2月に東京で開かれる食器類の見本市に出品するなど販路開拓に乗り出す。
市産技研は
「今回の製法を、高精度のセラミックスの製造技術が求められる半導体製造装置用の部材などに展開したい」
としている。