「土石流に似た現象」専門家分析 土砂崩れ、もろい火山灰地質原因?
09/09 05:00 hokkaido-np.co.jp
【厚真】胆振東部地震直後の6日未明、胆振管内厚真町で発生した大規模な土砂崩れで、谷間の斜面で崩れた土砂が周辺の土砂を巻き込みながら高速で流れ落ち、土石流に似た現象が複数箇所で起きていたことが、砂防学会北海道支部の現地調査で分かった。
雨で地盤が緩んでいたというより、もともともろい地質だったことが原因の可能性があるという。専門家は
「斜面は不安定な状態が続いている」
とし、雨や地震に注意を呼び掛けている。
砂防学会北海道支部長で、7日に現地調査した北大大学院の小山内信智特任教授(砂防学)によると、土石流に似た痕跡は厚真町富里地区などで、いくつか見つかった。
土砂は麓から最大で約100メートル先まで流出していた。
震動で谷間の表層の土砂が崩れ、谷底に堆積していた不安定な土砂と一緒に麓に流れ込んだとみられる。
5日未明の台風21号の接近で厚真町も降雨を観測したが、小山内氏は
「それほど土に水分は浸透していなかった」
とした上で、
「土砂に大量の水が含まれていない点で厳密には土石流と異なるが、谷地形でエネルギーが集中し長い距離を流れた点は共通している」
と指摘する。
こうした現象が起きた要因について、火山灰が降り積もったもろい地質があると推測する。
「重い土砂なら谷底との摩擦で遅くなるが、火山灰は軽くて粘着性が弱く、地面との摩擦が少ないため、速度を落とすことなく麓まで土砂が流れたのではないか」
(小山内氏)とみる。
胆振東部地震以降も、最大で震度4の地震が胆振管内を中心に続き、9日は道央に雨が降る予報だ。小山内氏は
「崩れた箇所の周辺は斜面が不安定で、雨や地震で崩壊を起こしやすい。地震活動が続いているうちは斜面に近づかないでほしい」
と話す。
同じく現地調査を行った国土交通省国土技術政策総合研究所の野呂智之・土砂災害研究室長も
「地震前より少ない雨でも斜面が崩れる恐れがある。早めの避難が大切だ」
と警戒を呼び掛けている。
厚真町では複数の家屋が土砂崩れに巻き込まれ、死者・行方不明者は約30人にのぼる。
地震による土砂災害では、2度の震度7を観測した2016年4月の熊本地震でも、南阿蘇村などで大規模な斜面崩壊が発生し、10人が犠牲になった。
(角田悠馬、吉田隆久)