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フラットパネルディスプレイ製造におけるレーザスクライビング

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フラットパネルディスプレイ製造におけるガラスのレーザ切断
 
フランク・ゲブラー        ils-japan.jp/articles/0810_26
 
最近のCO2レーザの信頼性、冷却切断法、さらにはガラスのハンドリングの進歩によって、レーザ切断は機械的切断に代替可能な方法になった。
 
 現在、ほとんどすべてのフラットパネルディスプレイ( FPD )の製造には薄い板ガラスが使用されている。
 
しかし、従来の機械的なガラスの切断法では、新たなディスプレイの用途で要求される品質とスループットに必要な特性を確保できない。
 
特に、非常に薄い基板を使う用途では難しい。
 
CO2レーザは長年にわたり特殊ガラスの切断に使われてきた。
 
しかし、最近のCO2 レーザの信頼性、冷却切断法、ガラスのハンドリングなどの進歩は目覚しく、レーザ切断はこれまで以上に幅広いFPDの製造用途において、機械的切断法を置き換えられる方法になった。
 
イメージ 1
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
本稿はレーザガラス切断の基礎技術と必要条件を従来の切断法と比較しながら紹介する(図1)。
 
 
薄いガラスの用途

 PDA やMP3などのコンシューマ・エレクトロニクス製品は、コストの低下に加えて、小型化/軽量化の要求もとどまるところを知らない
 
ところが皮肉なことに、アップル社のiPhoneが良い例であるように、消費者はこれらのデバイスに対して、同時により大きくより高品質のディスプレイを要求している。
 
同様にフラットスクリーンTVのメーカーは、自社の製品を軽量化する方法を模索している。
 
いずれの場合も、薄いガラス基板を使用することがその解決策となる。超薄型の携帯電話では0.3mmにまで薄化されたガラス基板が使われている。
 
大型TV(60インチ)の場合でも、現在の標準的なガラス基板の厚さは2.8mm でしかない。

 しかし、薄いガラスほど機械的に壊れやすくなる。
 
その結果、生産現場でのガラスの切断やハンドリングは難しくなり、最終製品も壊れやすくなる。後者の要因は、タッチパッドのように二重にして使用するスクリーンの場合はとくに重要になる。
 
 
レーザ加工のエッジ

 何世紀にもわたってさまざまな方法で行なわれてきたガラス切断の伝統的な技術は、まず、ガラスの表面を硬くて鋭い工具(一般にはダイヤモンドまたはカーバイドホイール)でスクライビングして、次に、機械的なスナップ力を利用して、ガラスにクラック(亀裂)を完全に伝搬させる。
 
自動化された装置では、ガラスに「チョッパーバー」を押し付ける割断によって、切り離される場合が多い。

 残念なことに、この方法は非常に薄い基板の場合には不都合な点がある。
 
具体的には、切断工具の機械的な力によって材料にマイクロクラックが生成され、次の切り離しの段階では小さなチップとデブリが発生し、エッジはガラス面に対して必ずしも垂直ではなくなる。

さらに、最終仕上げをしたエッジには機械的切断から生じた大きな機械的応力が残留する(実際には、厚さが1mm以下のガラスは非常に壊れやすいため、このような基板の機械的切断はほとんど不可能になる)。
 
切断が終了したガラスは、その後のクラックと破断の発生を防ぐために、切断面の研磨が必要になる。
 
また、その後の回路形成などの工程で障害となるデブリを除去する後加工の洗浄も必要になる。

 ガラスのレーザ切断では、これらの問題のいくつかを解決できる。
 
まず、レーザ切断は非接触加工なため、マイクロクラックとチッピングの問題は完全に回避できる。
 
また、レーザ切断は残留応力がガラス内部に基本的に発生しないため、エッジ強度が高くなる。
 
ガラスパネルの中央に力が加えられる場合であっても、通常のすべての破壊はエッジから始まるため、エッジ強度が高いことは非常に重要である。その結果、レーザで切断したガラスは、機械的に切断したガラスに比べると、2~3倍の外力に耐えることができる。

 レーザ切断は加工後の洗浄や研磨を必要としないため、工程数も減少する。
 
そのため、レーザ切断装置の設備投資は機械的システムよりも大きくなるが、追加する研磨機が不要になり、全体の投資額は機械加工に比べて低くなる。 
 
レーザ切断は曲面状のガラスも容易に切断できる。
 
曲面切断のニーズは、特に携帯電話の用途で増加している。
 
この場合は多数のメーカーがガラスをプラスチックカバーに置き換えて、擦傷に対する耐性を増強しようとしている。しかしながら、この加工は小さな半径の丸いエッジが必要となる場合が多く、切り欠きが要求される場合もある。

レーザ切断の基礎

 ガラスのレーザ切断には二つの基礎技術がある。
 
一つはレーザスクライビングと呼ばれる技術で、主に厚さが0.3 ~0.7mm の範囲の基板に使われる(図2)。
 
イメージ 2
 
もう一つはガラスのフルボディ(全厚)をレーザで切断する技術で、その多くは0.2mmないしはそれ以下の薄い基板の切断に使われる。
 
いずれの方法も、一般に、連続波(CW)CO2レーザ、または繰返し速度が十分に高く、送り速度がこの用途に使われるCWレーザと基本的に等しくなるパルスCO2レーザを使用する。 
 
レーザスクライビングの場合、レーザはガラス表面に集光され、連続切断ができるように移動する。
 
すべてのガラスは10.6μmのCO2 レーザ波長を強く吸収するため、基本的にすべてのレーザエネルギーはガラスの表面またはその近傍に供給されて、急速な加熱を引き起こす。
 
次に、ガラス表面には液体または空気が供給され、ガラス表面は急速に冷却して、その結果としての熱衝撃によって、ガラスには一般に深さ約100μmの連続したクラックが発生する。
 
すべてのスクライビングが完了すると、ガラスは機械的ローラまたは制御されたチョッパーバーの下を通過し、ガラスには基板の全長にクラックが伝搬して、切断に十分な力が与えられる。この切断はデブリがなく、表面に対して垂直になる。

 最近、ガラス切断の代替法となる非機械的な方法が登場した。
 
この方法は、最初のスクライブが第2 のレーザで再加熱され、ガラスは膨張して基板の全長にクラックが伝搬する。この場合は冷却が行われない。

 レーザによるフルボディ切断もレーザスクライビングと同様にして行われる。
 
相違は送り速度が遅くなり、液体の代わりに気体を使うことで、冷却の程度が抑えられることだ。
 
その結果、レーザによるクラックは単一工程であっても薄い基板の厚みの全体に連続して発生するので、切り離しのための破断工程が不要になる。
 
表は機械的切断と2種類のレーザ切断の特性を比較して示している。
 
 
切断工程の最適化

 独MDI ショットアドバンストプロセシング社(MDI Schott AdvancedProcessing)は、レーザ技術に基づく高精密ガラス切断装置を各種用途向けに製造している。同社は、とくにFPD用の切断装置に焦点を合せている。

 MDIショット社の上級副社長を務めるクリストフ・ハーマンス氏は、
 
「われわれは切断工程をいくつかの観点から最適化して、機械的切断法とコスト競争力があり、薄い基板でも優れた結果が得られる装置を提供できるようにした。とくに冷却剤の供給法に重点をおいて開発した。
 
各種の気体と液体の効果を調べて、高い制御性と再現性で冷却剤を供給できる噴霧ノズルの新しい技術を開発した。この技術は使用する液体冷却剤の容量が最小になり、加工部分に残留しない液体を使用できる」
 
と語っている。

 同社は通常のガウスビームがガラスのスクライビングに最適ではないことも見出している。集束したガウス分布がスクライブの中心に強い強度ピークを持つため、ガラスが液体になる転移温度を超える加熱が行われてしまうことが問題になる。この局所転移は残留応力を生み出し、続いてクラックを引き起こす。

 MDI ショット社はいくつかの技術を利用して、レーザパワーの分布が切断されるガラスとその他のパラメータに応じて変更可能にしている。
 
一つの方法では、レンズ系または反射光学系を使用して、線形状のビームを生成する。また、ビームはスクライブ線に沿って、高い周波数で前後に走査される(図3)。

 同社が使用するCO2 レーザは50 ~250W のパワーレベルがあり、この範囲の高い方のレーザはスループットの増加あるいは厚い基板の切断に使用される。ハーマンス氏は
 
「使用しているレーザの一つは、われわれの応用に重要ないくつかの特性を備えたコヒレント社のダイヤモンドK250だ。例えば、スクライブ深度はパワーに対して直に比例するため、非常に優れたパワー安定性が必要になる。
 
同様の理由によって、横モード構造は加工対象物のレーザパワー分布を決めるため、その一貫性も重要になる。さらに、われわれはレーザのすべての出力範囲で一定に維持される出力分布を必要としている。
 
それは与えられた装置がいくつかの異なる加工、例えば裸ガラスと被覆ガラスの両方のスクライビングに使われ、異なるパワーレベルが必要になるからだ。さらに、据付ける新しいレーザのキャリブレーションをすべてにわたって繰返すことはできないので、装置ごとの発振モードの一貫性も重要になる」
 
と語っている。

 ハーマンス氏は動作可能時間と信頼性が重要なことも強調したが、それは週7日間24時間体制で使われる用途が多いためだ。彼は
 
「最近、ダイヤモンドE‐400レーザがコヒレントから発売されたが、このレーザは信頼性が高いので、われわれも使用している。例えば、このレーザは故障の原因になりやすいRF 電源ケーブルが不要の集中電源方式を採用している。
 
また、E‐400は実質的にすべての動作パラメータを監視する自己診断機能を内蔵して、起こり得る故障を前もって予測可能にしている。さらに、レーザ自体がウエブサーバであるため、われわれは装置を遠隔サイトから監視して、まさに発生しようとしている問題の情報を顧客に提供することもできる」
 
と語っている。
 
結び

 21世紀の消費者製品のニーズは、それらのディスプレイに使われるガラスパネルが、もはや何世紀にもわたる旧い技術を使って切断されないことを意味している。
 
幸いなことに、レーザによる「切断加工」は、従来の方法がもつ大きな制約を克服できる。レーザ切断は後加工が不要なため、製品コストの大きな増加なしに利用できる。
 
イメージ 3

 

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