スマホやタブレットは大学の講義でも導入が必要でしょうが、コンテンツの工夫やアプリの開発が遅れています。その点、学習塾は導入しやすい。成績向上とどのような関連があるのか興味深い。
学習塾、タブレット導入加速 「コンテンツの充実が不可欠」
学習塾運営各社が学習成果を高め他社との差別化を図ろうと、タブレット端末の導入を急いでいる。少子化の中にあっても公立中学生への教育支出は減少傾向にあり、学習塾同士の生徒獲得競争は激しさを増している。
タブレットの低価格化に合わせ大量導入する学習塾が相次ぐ見通しだ。
教室で関心引き出す
栄光ホールディングスの事業会社が展開する栄光ゼミナールは4月から小4、中1、高1の3学年に米アップルのタブレット「iPadミニ」の貸与を始めるのに続き、2015年度中には全学年に導入する方針だ。
同社はさいたま市内の教室で2年にわたりタブレット導入の試行を重ねてきた。その結果、授業内で行う確認テストの点数がおおむね向上したことが判明。本格的な導入を決めた。
教室で講師が生徒と向き合いながらタブレットの操作方法を含めて生徒の関心を引き出すことにより、成績向上につなげられるとみている。
当面は、タブレットを授業の映像やテスト・入試問題の解説動画の配信など家庭学習のサポートに活用する。
今後は、例えば板書をノートに書き移す時間を短縮させながら、理解度を高めるといった教室でのタブレット活用法を試し、実用化を目指す。
栄光の場合、タブレット利用の料金は、通常の月謝に加え、月1080円でレンタルする形をとる。初年度は、塾に通い始めることが多い小4生や中1生などを対象とするが、2年以内に全学年に対応する計画だ。
一方、学研エデュケーショナルは、昨年3月から、学研教室の通塾と家庭学習の両方でタブレットを活用する「学研iコース」を開始した。
週2回の通塾と家庭でのタブレット学習を組み合わせたコースの場合、教室内では、各個人に対応した教材が入ったタブレットを活用して学習する。
「図形の問題を例に取ると、紙の教材では、平面でしか見せられないが、立体図形を動かしながら確認できるといった工夫が図れ、理解度を高めることにつながっている」
(学研ホールディングス)と説明する。
これまでに約5000教室にタブレットを導入したが、
「早急に全国約1万5000教室での対応を図りたい」
考えだ。
小中学校方針追い風
タブレットの低価格化の進行に加え、政府が全国の小中学校で
「20年までに1人1台のタブレット端末の実現を目指す」
という方針を掲げていることも追い風となり、学習塾での導入機運が一気に高まっている。
IT(情報技術)専門調査会社のIDCジャパンの調べによると、学校を含めたタブレット出荷台数予測で、13年は25万台にとどまるものの、5年後の18年には128万台にまで増加すると予測する。
ただ、文部科学省が今年1月に公表した「12年度子供の学習費調査」によると、公立の中学に通う学生の塾などの補助学習費は漸減傾向にあり、08年の24万1000円をピークに、12年には22万4000円に落ち込んだ。
こうしたなか、
「ただタブレット端末を配布しただけでは意味がない。コンテンツの充実が不可欠」
(栄光ゼミナール)とするように、
「タブレットの利用料金の増加への負担感を、教育効果の充実でどこまで解消できるかが学習塾でのタブレット普及のカギとなる」
(教育産業市場関係者)との見方がある。
学習塾のタブレットはようやくハードの本格導入が始まったばかりで、活用は手探りの状態にある。
専用教材のコンテンツや授業内容の質の優劣が今後の学習塾各社の評価を分けることになりそうだ。
(那須慎一)