当然、放電するし電解液も水酸化カリウムor 水酸化ナトリウム等のアルカリや有機溶媒などで危険である。
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ボタン電池誤飲「1時間で食道に穴」も…知られていない怖さ、子供の事故減らず
2014.11.20 07:00更新 産経
好奇心旺盛で、何でも口に入れたがる乳幼児。
誤って異物を飲み込んでしまう事故にヒヤリとした経験を持つ保護者は多いが、それがもしボタン電池だったら、約1時間で食道に穴が開いてしまうような恐ろしい事故につながることもある。
ボタン電池の誤飲危険性について調査を続けている消費者庁と国民生活センターは、タイマーやリモコンなどの電化製品の中には電池のふたが簡単に開いてしまう構造のものもあり、乳幼児が口に入れてしまう危険性もあると指摘している。日常の危険は、身近なところにある。
誤飲で摘出手術、1~2カ月入院例も
消費者庁に寄せられた事故事例を見ると、ボタン電池の誤飲が重大な結果を招いたケースも少なくない。
今年1月、電池を保管しておくケースのふたが開いているのを2歳男児の保護者が発見。あるはずのボタン電池が見当たらず、「もしや…」と思い、男児を連れ、病院でレントゲンを撮ってもらったところ、食道に電池の白い影が写っていた。
手術で摘出したものの、食道に穴が開きかねない状況が続き、男児は1カ月間入院した。
昨年8月には、LEDライト付き耳かきに入れてあったボタン電池を1歳男児が誤飲。9時間に及ぶ手術の末に取り出したものの、放電の影響で気管と食道に穴が開き、男児は2カ月間も入院した。
ほかにも、
▽ 補聴器
▽ 懐中電灯
▽ タイマー
▽ 基礎体温計
▽ リモコン-
などのボタン電池の誤飲事故が報告されている。
いずれも保護者がちょっと目を離したすきに起きており、玩具だけでなく、ボタン電池を使用した日用品や、電池の保管方法にも注意が必要という。
飲み込むと化学やけどのおそれ 6割が「知らない」
消費者庁などによると、ボタン電池の形状は、ボタン型とコイン型の2つがあり、放電電圧が1・5ボルトのボタン型に比べ、コイン型でよく使われるリチウム電池は放電電圧が3ボルトと高く、電池を使い切るまで高い電圧を保持する特性がある。
また、硬貨に似た直径2センチ前後のコイン型は食道にひっかかりやすく、早く摘出しないと、高い電圧でとどまり続ける可能性があるという。
消化管に接触した電池から電流が流れると、電気分解により、電池の外側(マイナス極側)にアルカリ性の液体が作られる。
この液体はタンパク質を溶かす性質があり、わずかな時間でも消化管の壁を損傷するなど重篤な症状を引き起こすとされる。鶏肉を使用した化学やけどの再現実験では、約20分で電池の形のくぼみができるほどの損傷が確認された。
消費者庁が今年3月、0~3歳の乳幼児を持つ20~40代の母親約3248人を対象に行った調査によると、約8割に当たる2569人が、ボタン電池の誤飲事故が起きていることを知っていると答えた。
しかし、重症化することについては約6割に当たる2021人がその事実を知らないと回答。危険性が十分に認知されていない実態が浮かび上がった。
米国では35件の死亡事例も
消費者事故の情報収集のため消費者庁と国民生活センターが共同事業として行っている「医療機関ネットワーク」には、平成22年12月から26年3月までに、子供のボタン電池の誤飲、誤飲疑いの事故情報が93件寄せられた。年齢別では3歳以下が91件と大半を占め、そのうち54件が1歳児の誤飲だったという。入院まで至ったケースは10件、軽傷が83件だった。また米国では1990~2009年の間に、約5万人が救急診療を訪れた。35件の死亡事故例もある。
子供を対象にした玩具の電池のふたは、一般社団法人日本玩具協会の玩具安全基準(ST基準)で、ドライバーなど工具を用いないと開けられないような構造にしなければならないと定められているが、同ネットワークの事故例にある日用品など乳幼児の使用を想定していないものは、規格基準がなく、電池のふたが簡単に開いてしまうものもある。
国民生活センターは8~9月、
▽電子体温計
▽キッチンタイマー
▽湿度計・置き時計
▽照明付き耳かき
▽電卓▽ライト
▽家電リモコン
-の計29銘柄を対象に、電池のふたの構造調査を実施。ねじ止めされていたり、コインを使用しないと開けることができないものなどがある一方、工具を使用せずに容易に取り出せたのは12銘柄に上った。
高さ30センチからの落下テストでは4銘柄、高さ138センチの落下テストでは5銘柄のふたが開き、電池が飛び出した。
また、誤飲の注意を呼びかける表示については、約7割の銘柄に記載されていたが、化学やけどなどの危険性についてまで記載していたのはゼロだった。
「予測不可能な行動」に備えるには…
消費者庁と国民生活センターはこれまでにも、ホームページや新聞記事などを通じて注意を呼びかけているが、その後も入院を伴う重症化した事故が報告されるなど、減少傾向には至っていないという。
新聞でボタン電池の誤飲事故やその危険性を知ったという4歳と1歳5カ月の2児の母で、現在妊娠4カ月の千葉県白井市の女性(37)は
「子供はシール、積み木、消しゴムと興味を持ったものは何でも口に入れてしまう。手の届かないところに保管するなど注意を払っているが、子供の行動は予測不可能だから」
と困惑する。
緑園こどもクリニック(横浜市泉区)の山中龍宏院長は
「ボタン電池を誤飲してしまった場合は、死に至るケースもあるので救急車を呼んで一刻も早く受診してほしい」
と話す。また、飲んだかどうかはっきりしない場合でもレントゲン写真を撮ればボタン電池の有無や停滞位置が確認できるため、
「誤飲の可能性がある場合にも必ず受診しましょう」
とアドバイスしている。