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米最高裁、自然のDNAに特許認めず

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新聞報道では何を言っているのかお分かりにならないかと思います。後半の記事にはDNA特許の状況が述べられていますのでご参照下さい。
 
議論になっている問題は、米国の特許制度に起因しているように思えるという。特許が競争を阻害し、より優れた製品開発を止めてしまう?ということも起こりえる(anlyznews.com/2010/09/blog-post_03)。
 
まあアメリカのサイエンスの異常さが引き起こす様々な問題の一つです。サイエンスをすべて金儲けにしてしまうのですから困ったものです。
 
 
サイエンスの発見は1950年頃でおしまいで、後はその応用、商業化に向かっているように見えます。
 

 米最高裁、合成されていない人間の遺伝子に特許認めず
 
2013年 06月 14日 12:16 JST [ワシントン 13日 ロイター] -
 
米最高裁判所は13日、人間の遺伝子に特許を認めない判断を下した。ただ、人工的に合成された遺伝子については特許の取得が可能とした。
 
この裁判は、米バイオ医薬品会社ミリアド・ジェネティックスが乳がんと卵巣がんに関連した2つの遺伝子について特許を取得したことに、医療研究者らが反対し、争われていた。
 
判決は患者側とバイオテクノロジー業界にとって部分的な勝利となった。
 
研究者や患者の支援団体は、病気のリスクを検査する遺伝子テストの費用低下につながるとの見方を示した。
 
バイオテクノロジー業界にとっては、研究室で生成された遺伝子とがん検診などの検査に使用されるプロセスの特許が保護されたことは朗報となった。
 
最高裁は、研究室で、自然の状態に変更が加えられた遺伝子は特許取得が可能だとしている。

下記の記事が詳しい状況を述べている。
 
(blog.livedoor.jp/science_q/archives/1125128)
 
今、遺伝子に関する特許がこれと似たような状況に直面しているようです。
 
遺伝子、特にDNA配列そのものに対する特許を最初に主張したのはもちろんアメリカで、遺伝子配列を比較的簡単に解読できるようになった1990年代初頭から、機能も何もわかっていない単なる配列情報だけでも特許を取ろうと動き出しました
 
ただ現在では、さすがにそれはまずいだろうということで、1999年5月の日米欧三極特許庁会合なるもので、機能や特別な有用性の開示されたDNA断片にしか特許を与えないということが定められました。
 
これによって、機能や有用性が分かったDNA配列は、同じく機能や有用性の分かった他の多くの化合物と同様に特許の対象となることが決まったわけです。
 
ところが、今年の3月29日、ニューヨーク南地区の地方裁判所で、バイオベンチャーのMyriad社がもつ乳がん関連遺伝子に関する遺伝子特許を無効とする判決が下されたのです。
 
これは、昨年に、患者、医師、研究者の団体が、Myriad社を相手取り、その特許が医療研究の正常な発展を阻害しているとして、起こした訴えに対する判断でした。
 
この判決には、遺伝子特許を保有する多くのバイオ関連会社が一様に驚いたようですが、大方の見方は、次回の控訴審では逆転するだろうというものです。
 
しかし、問題は、なぜこのような訴えがなされたのかという点です。
 
その辺りの背景が、Nature誌4月15日号の論説記事に掲載されています。
 
それによれば、原告らは、Myriad社の保有する乳がん遺伝子特許により、その遺伝子のもつ乳がん特異的な変異を乳がんの遺伝子検査に使用できないことに危機感を抱いての訴訟だということです。
 
恐らくMyriad社は、将来的にこの特許を使って乳がん治療薬の開発を目指していて、遺伝子検査などは眼中にないのでしょう。
 
ただ、それならそれで、嚢胞性線維症関連の遺伝子特許のように、他社に使用ライセンスを与えるといった方法もとれたはずです。
 
しかし、Myriad社はかたくなにそれを固辞した結果、このような事態になったのだろうと考えられます。
 
それほど多くはないガン関連遺伝子マーカーの遺伝子検査ですらこの状況(他の病気に関する遺伝子検査についてはこちらもご参考に)では、来るべき個人ゲノム配列解読による全遺伝子検査では、入り組んだ遺伝子特許の権利絡みでにっちもさっちも行かなくなるだろうと論説記事では危惧しています。
 
しかし、アメリカでは、すでにこのような状況を念頭に置いた具体的なアクションが始まっているようです。それは、患者の利益を最大限に考慮した特例によって、たとえ特許化されている遺伝子であっても、遺伝子検査には使えるようにするという提言です。
 
これには、異論も多いようですが、大切なことは、特許が発明者を守るのは、競争相手からだけであり、その発明を必要としている潜在的顧客からではないということを再認識することが必要だと思われます。
 

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