Quantcast
Channel: blog化学
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2255

アスパルテーム発ガン論争

$
0
0
イメージ 2わざわざ怪しげな構造のアスパルテームを摂取する必要性はないと思う。ご自分の触感を信じよである。奇妙な味がするはずである。
 
もちろん甘いと騙されるのは人間だけである。マウスもか?
 
アスパルテーム発ガン論争
 
robust-health.jp/article/preventive01/000166.php   大西睦子
 
 10月24日、ハーバード大学関連医療機関Brigham and Women's Hospital の研究者らが、「人工甘味料および糖含有ソーダとリンパ腫や白血病のリスク」に関して、雑誌The American Journal of Clinical Nutritionに報告をしました。
 
Schernhammer ES, Bertrand KA, Birmann BM, Sampson L, Willett WW, Feskanich D.

Consumption of artificial sweetener- and sugar-containing soda and risk of lymphoma and leukemia in men and women.
doi: 10.3945/
Am J Clin Nutr December 2012 ajcn.030833
 
 この報告に対して、
 
「調査結果は弱い。多くの制限があり、誤解を招く。欠陥がある」
 
など、たくさんの批判があり、最終的に病院側は「エビデンス※1の弱いデータ」であったことを認め、
 
「そうした研究の推進は早まったものだった」
 
と謝罪しました。今回は、研究者らの報告内容とその批判に関してお伝えしたいと思います。
 
イメージ 1 アスパルテームは、多くの低カロリー飲食料品に使用されている人工甘味料※2です。
 
米国では1981年に制限付き使用が承認されました。
 
その後、1983年に炭酸飲料に使用が開始され、1996年には一般的な食品の使用が承認されました。今日では、アスパルテームは世界中で、約6000の食品に甘味料や調味料として使用されています。
 
 ダイエットコーラの1リットル瓶には平均560mgのアスパルテームが含まれ、現在、米国でダイエット炭酸飲料に使用されるアスパルテームの年間量は4500トンと言われます。米国でのアスパルテームの年間消費量(全飲食料品)は5000-5500トンと推計され、その86%をダイエット炭酸飲料が占めているのです。
 
 アスパルテームは、食品添加物の歴史の中で最も広範囲にテストされ、これまで多くの実験的な研究により安全性を確認、評価されてきました。にもかかわらず、健康関連の懸念が議論され続けています。
 
例えばラットでの研究で、アスパルテームの発がん性(脳腫瘍を引き起こす疑い)が示唆されましたが、再試験で否定されています。
 
 アスパルテームは、特に液体中で、すぐに3つの主成分(メタノール※3、アスパラギン酸※4、フェニルアラニン※5)に分解されます。メタノールがヒトの体内で代謝を経て生じるホルムアルデヒド※6は、ヒト発がん性物質※7と報告されています。
 
アスパルテームの代謝で摂取することになるメタノールは、問題にならない量と言われています。
 
しかし、最近行われた1800匹のラットによる大型実験の結果、ヒトの一日摂取許容量換算よりもはるかに低いアスパルテームの用量でも、用量が増えるほどリンパ腫、白血病、および腎細胞腫瘍が増えることが報告されました
 
ただし、この報告を受け、ヨーロッパでも欧州食品安全衛生庁などいくつかの機関が審査しましたが、「以前に確立された40mg/kg体重のアスパルテームの一日摂取許容量を改訂する理由はない」と結論づけられました。米国では、アスパルテームの一日摂取許容量は50mg/kg体重に設定されています。
 
人間におけるアスパルテームの摂取とがんリスクに関するデータは不足していますが、主としてアスパルテームの摂取量とがんリスクとの関連を支持していません。しかし、今までの研究では、それらの暴露評価に制限がありました。今回の報告は、アスパルテームあるいは糖類を使用した炭酸飲料が、血液のがん(悪性リンパ腫※8、多発性骨髄腫※9、白血病※10)のリスクに関与するかどうかという疫学調査の結果です。
 
 アスパルテームの使用が許可されて以来、著者らはアスパルテームの摂取量とがんの関係を調査しています。調査には、2つの大規模コホート研究※11、すなわち1976年に始まった女性看護師を対象とした研究(Nurses'HealthStudy;NHS)と、1986年に始まった男性医療従事者を対象とした研究(Health Professionals Follow-Up Study;HPFS)が採用されました。両コホート研究ともアンケートを実施し、がんやその他の健康上の問題に関わるライフスタイルと病歴の情報が被験者から提供されます。
 
ダイエット炭酸飲料の消費の頻度は、1瓶もしくは1缶(355ミリリットル)を単位として評価を行いました。カフェイン入りダイエットコーラ、カフェインなしのダイエットコーラ、他のダイエットソーダの3種類の合計を"ダイエット炭酸飲料"とし、併せて、糖類を使った炭酸飲料(ダイエットタイプでないもの)の消費も同様に評価しました。分析のために、摂取量によって被験者は5つのカテゴリーに分類されました。ゼロを最も低いカテゴリーとし、残るカテゴリは摂取量の少ないほうから多いいほうへ被験者数を4等分しました。
 
 2つのコホート研究の全対象者(77,218人の女性と47,810人の男性、全員22歳以上)から、1,324人の非ホジキンリンパ腫、285人の多発性骨髄腫、339人の白血病が確認されました。さらに以下のことが言えました。
 
●男女の研究データを合算してみると、炭酸飲料全般の摂取量と非ホジキンリンパ腫および多発性骨髄腫のリスクとの間に特段の関連は認められませんでした。
 
●しかし男性については、ダイエット炭酸飲料をまったく飲まない人に比べ、ダイエット炭酸飲料を日に1瓶・缶以上飲む人では、非ホジキンリンパ腫と多発性骨髄腫のリスク上昇が認められました。女性ではこうした関連は認められませんでした。
 
●さらに意外なことに、男性では糖類を使った炭酸飲料でも、飲む量が増えるほどに非ホジキンリンパ腫のリスクが上昇する関係を認めました。女性ではこれは確認されませんでした。
 
●一方、男女のコホート研究それぞれからは白血病リスクの上昇については特段の関連が認められなかったのですが、男女の研究データを合算してみると、ダイエット炭酸飲料を日に1瓶・缶以上飲む人では、白血病のリスクの増加を認めました。
 
 なお、性差の理由は、男性ではADH(アルコール脱水素酵素)※12の活性が女性に比べて高く、体内でホルムアルデヒドに変換されやすいため、高いがんリスクとなると考察しています。
 
 この報告に対して以下の批判がありました。
 
1) 著者らは統計を誤解している。実際、アスパルテームの消費とがんの関係は極めて弱いものである。
 
2)報告された知見は、国立がん研究所の研究とは対照的である。国立がん研究所の研究では50万人の男女を調査対象とし、アスパルテームを摂取しなかった人と比較して、アスパルテームを使用する人々の間で白血病およびリンパ腫のリスク増加は見られなかった。
 
3)その他の要因が調査結果に影響を及ぼしている可能性がある。たとえば、研究では、炭酸飲料中の他の成分を比較対照した実験が行われていない。
 
4)この研究は疫学的だったので、原因と結果を関連付けることはできない。複数あるアスパルテームの所見のうち、いずれかのみが原因であった場合に確認することは不可能である。
 
5)アスパルテームの摂取量は自己申告であるため、評価が不完全であり、多くの制限がある。
 
6)米国食品医薬品局(FDA)、欧州食品安全機関(EFSA)と、世界中の他の規制当局が、既にその安全性を検討している。アスパルテームは、食品の中で最も徹底的に研究されたものの一つである。
 
実際、200以上の研究において30年間テストされ、アスパルテームは安全と確認されている。
 
 こうした批判に対して病院側が先述のような謝罪をすることは、非常にまれな対応と思います。一方、論文共同執筆者であるWalter Willett博士(世界トップレベルの栄養学者であり疫学者)は、「私は、この知見は、アスパルテームとがんのリスクに関する研究をさらに推し進めるにあたり、それを正当化するだけの十分な強さがあると思います」と述べています。
 
 アスパルテームの安全性に関する論争は、いつ、どのような決着がつくのでしょうか?
 
 ※1...証拠で。薬や治療方法,検査方法など,医療や実験の内容全般について,そ主張や結論の正しさや的確さ裏づけるもの。
 
※2...非栄養甘味料。食品に存在しない甘み成分を人工的に合成した合成甘味料(サッカリン等)と、天然にも存在する甘味料を人工合成したもの(ステビア等)がある。
 
※3...アルコールの一種(メチルアルコール)。ホルマリンの材料、アルコールランプの燃料として知られるが、誤飲による中毒で失明や死亡する危険もある。
 
※4...体内でも作られるアミノ酸で、タンパク質の合成に使われるほか、尿の合成を促進する作用がある。尿として排泄されるアンモニア(体内で循環系に入ると毒性を発揮)を体外に排除し、中枢神経系を守るのを助ける。
 
※5...神経伝達物質として神経細胞間で信号を伝達する役割を持つアミノ酸(体内合成できないため、「必須アミノ酸」の一つとされる)。食品添加物として、栄養ドリンク等に栄養強化目的で使われたり、香料の原料や各種食品で風味の改良目的に使用されている。
 
※6...毒性の強い物質(有機化合物)で、濃度によって目、のどなどの粘膜、皮膚への炎症を引き起こす。健材や家具などから空気中に放出されたものが、いわゆる「シックハウス症候群」を引き起こすことでも知られる。ホルムアルデヒドの水溶液がホルマリン。
 
※7...正常な細胞をがん(悪性腫瘍)に変化させる性質を持った化学物質。
 
※8...免疫システムを構成するリンパ系組織から発生するがんの総称。リンパ節や胸腺、扁桃腺といった組織・臓器と、リンパ節をつなぐリンパ管、その中を流れるリンパ液(液体成分とリンパ球、リンパ球の代表例が白血球)からなる。リンパ系組織は全身に分布しているため、悪性リンパ腫、特に非ホジキンリンパ腫は全身で発生する可能性がある。(ホジキンという人が最初に報告したホジキンリンパ腫以外をまとめて「非ホジキンリンパ腫」と呼ぶ)
 
※9...骨髄に存在する形質細胞ががん化して骨髄腫細胞と呼ばれる異常な細胞となり、無制限に増殖する病気。形質細胞、免疫機能を担う抗体を作る役割を持つ。50代以降の発症が多く、腰や背中の痛み、骨の痛み、だるさ、息切れ、動悸、貧血の症状が現われ、出血しやすくなるほか、感染に対する抵抗力も低下して肺炎などにかかりやすくなる。
 
※10...血液のがん(主に白血球、まれに赤血球、血小板などに発生)の総称。血球を作る細胞(幹細胞)が、骨髄中でがん化して無制限に増殖し続け、血を造っている骨髄を占拠してしまうため、正常な血液細胞が減って感染症や貧血、出血症状などが出やすくなる。あるいは骨髄から血液中にあふれ出た白血病細胞がさまざまな臓器に浸潤して障害をもたらす。
 
※11...特定の地域や集団に属する人々を対象に、長期間にわたってその人々の健康状態と生活習慣や環境の状態など様々な要因との関係を調査する研究。
 
※12...体内でアルコールを処理する酵素の一つ。主に肝臓で働き、アルコールをアセトアルデヒド(毒性あり)に分解する。ちなみに、アルコール脱水素酵素2(ADH2)遺伝子の個人差によって、アルコールを酸化してアセトアルデヒドに変化させる酵素活性が低い人が日本人では40%もいる。なお、アルデヒドはアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の働きによって毒性のない酢酸に変えられる。「お酒に強い・弱い」を決定するのは、ADHではなくALDHである。
 
イメージ 3
 
 

 

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2255

Trending Articles