d-セリンなどのD型アミノ酸も一定の生理機能を有しているのか?紫外線や老化でもアミノ酸はL→Dへと変化すると言うが?慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)の指標としてのD型アミノ酸。
慢性腎臓病悪化の指標発見 透析リスク把握も、大阪大
2016年5月18日 20時43分 中日新聞
慢性腎臓病(CKD)が今後どのように悪化する可能性が高いのかを患者ごとに予測できる指標となる物質を見つけたと、大阪大や九州大などのチームが英科学誌電子版に18日発表した。
腎臓の機能が低下すると必要になる人工透析の導入や、死亡に至るリスクを把握しやすくなるとしており、新たな検査法として実用化を目指す。
腎臓病に合併しやすい糖尿病や心不全などの治療にも役立つという。
チームの猪阪善隆・大阪大教授(腎臓内科学)らは、タンパク質の原料となるアミノ酸のうち、体内にごく微量しか存在しないもののさまざまな働きを持つことが分かってきた「D型アミノ酸」に注目した。
(共同)
疾患とD- アミノ酸―バイオマーカーとしての可能性―
鈴木 将貴*・笹部 潤平・相磯 貞和
L-体とD-体 さて,これまで述べてきたアミノ酸
の概念は,正確にはアミノ酸の一側面である.
の概念は,正確にはアミノ酸の一側面である.
タンパク質構成アミノ酸のうちグリシンを除く19種
類のアミノ酸にはキラル不斉炭素があり,L-体とD-体
に分けることができる.生体の主要なタンパク質構成ア
ミノ酸はL-アミノ酸であり,高等動物にはL-体のアミ
ノ酸しか存在しないと考えられてきた.そのため,アミ
ノ酸といえばL-アミノ酸が想像されてきた経緯がある.
類のアミノ酸にはキラル不斉炭素があり,L-体とD-体
に分けることができる.生体の主要なタンパク質構成ア
ミノ酸はL-アミノ酸であり,高等動物にはL-体のアミ
ノ酸しか存在しないと考えられてきた.そのため,アミ
ノ酸といえばL-アミノ酸が想像されてきた経緯がある.
しかし,その後の革新的な分析技術開発によりキラル分
子の微量分析が可能になり,D-体のアミノ酸が実は哺
乳類の体内にも存在し,組織によってはL-体に引けを
取らない程の量が検出されている.さらに一部のD-ア
ミノ酸では生理機能が明らかにされ,疾患との関係性も
見いだされている.そこで,本稿ではD-アミノ酸の生
理機能と疾患との関わり,そしてバイオマーカーとして
の今後の可能性について述べたい.
子の微量分析が可能になり,D-体のアミノ酸が実は哺
乳類の体内にも存在し,組織によってはL-体に引けを
取らない程の量が検出されている.さらに一部のD-ア
ミノ酸では生理機能が明らかにされ,疾患との関係性も
見いだされている.そこで,本稿ではD-アミノ酸の生
理機能と疾患との関わり,そしてバイオマーカーとして
の今後の可能性について述べたい.
D-アミノ酸の生理機能と疾患
D-セリンと統合失調症 D-セリンは中枢神経系,
特に記憶学習などの高次機能を担う大脳皮質,そして短
期記憶や感情コントロールを担う海馬で豊富に存在する
ことが確認されている.大脳皮質や海馬には興奮性の
神経伝達を担うグルタミン酸受容体の一つ,N-メチル-
D-アスパラギン酸型グルタミン酸受容体(N-methyl-DAspartate
receptor: NMDAR)が広範囲に発現しており,
D-セリンはその調節因子として機能することが明らか
にされた.D-セリンはNMDARのグリシン結合部位
に結合5)してNMDARの活性を増強することで神経の
活動頻度をコントロールし,結果として記憶の形成や情
動反応に影響すると考えられている(図1).
特に記憶学習などの高次機能を担う大脳皮質,そして短
期記憶や感情コントロールを担う海馬で豊富に存在する
ことが確認されている.大脳皮質や海馬には興奮性の
神経伝達を担うグルタミン酸受容体の一つ,N-メチル-
D-アスパラギン酸型グルタミン酸受容体(N-methyl-DAspartate
receptor: NMDAR)が広範囲に発現しており,
D-セリンはその調節因子として機能することが明らか
にされた.D-セリンはNMDARのグリシン結合部位
に結合5)してNMDARの活性を増強することで神経の
活動頻度をコントロールし,結果として記憶の形成や情
動反応に影響すると考えられている(図1).
D-セリンとの関連性が注目された疾患が統合失調症
である.統合失調症は妄想や幻覚といった陽性症状と,
感情・思考・意欲の低下といった陰性症状を示し,他者
とのコミュニケーションの障害により社会生活を送れな
くなる深刻な疾患である.現在日本国内で推定80万人
の患者がいると考えられており,およそ100人に1人が
罹患する代表的な精神疾患である.主な原因は中脳辺縁
系のドーパミン増加によるものと説明され,臨床で主に
使用されている治療薬はドーパミン仮説に基づくものが
ほとんどである.しかしながら,現在でも難治性患者が
一定の割合で存在し,既存の戦略とは異なる治療法が求
められている.
である.統合失調症は妄想や幻覚といった陽性症状と,
感情・思考・意欲の低下といった陰性症状を示し,他者
とのコミュニケーションの障害により社会生活を送れな
くなる深刻な疾患である.現在日本国内で推定80万人
の患者がいると考えられており,およそ100人に1人が
罹患する代表的な精神疾患である.主な原因は中脳辺縁
系のドーパミン増加によるものと説明され,臨床で主に
使用されている治療薬はドーパミン仮説に基づくものが
ほとんどである.しかしながら,現在でも難治性患者が
一定の割合で存在し,既存の戦略とは異なる治療法が求
められている.