早稲田、慶応も含めてアジアの留学生で稼ぐ経営得体の知れない私大が多すぎる。また公立大や教員養成系大学、高専の廃止・統合なども急務であろう。
目前に迫る2018年問題 ついに文科省が「私大の闇」に斬り込む!?
2016年05月26日(木) gendai.ismedia.jp 伊藤 博敏
私大の半分近くが定員割れという現実
「2018年問題」をご存知だろうか。
18歳人口は、1992年の205万人をピークに減り続け、ここ数年は120万人程度で推移していたものの、18年からは再び減少に転じ、31年には100万人を割って99万人に落ち込むと予測されている。
この人口減は大学を直撃、今でも厳しい私立大学の経営悪化が、18年から一気に顕在化して社会問題化する、という意味である。
状況の悪化に拍車をかけているのが、18歳人口の減少が始まった91年に大学設置基準が大幅に緩和され、大学数が増えたこと。90年の507校が15年には779校と1・5倍増。需給バランスが完全に崩れた。
グラフは、今年度から始まった「私立大学等の振興に関する検討会議(後述)」で配布されたもの。18歳人口の右肩下がりを進学率の微増で支えてきたが、大学と短大を合わせた収容力は93・7%で18歳が望めばほぼ全入。
もちろん現在の進学率56.5%が、大きく高くなることは望めず、「定員割れ」の急増は目に見えている。
その定員割れの現状を、「『落ちこぼれ大学』死屍累々ランキング」と、刺激的なタイトルで報じたのが会員制月刊誌『FACTA』(16年2月号)である。
全国私立大学の半分近くが収容定員割れ。そのうえ学生数を収容定員で割った充足率については、既に79校が70%の要注意水準を切っていた。
充足率最低の愛国学園大学は、収容定員400名に対し学生数は85名で充足率は21・25%。
ランキング2位(31・33%)の苫小牧駒澤大学の場合、15年度の一般入試・センター入試の志願者は7名で全員合格。推薦とAO入試(一芸入試)を合わせても 入学者数は32名で入学定員150名を大きく下回る惨状だった。
入学人口の減少と大学数の増加は過当競争を引き起こし、社会事件化したものも少なくない。
06年には、会計書類を改ざんし、国の私学助成金を不正受給したとして東北文化大学元理事長が、補助金適正化法違反罪などで有罪判決を受けた。その影響は大きく、同大学は大学としては初めて民事再生法適用申請に追い込まれた。
13年には、アイドルの酒井法子さんの入学で話題を集めながら経営悪化に陥った創造学園大学などを傘下に持つ学校法人「堀越学園」(群馬県高崎市)に対し、文科省から初めて解散命令が出された。
この問題を契機に、大学破たん処理のあり方が本格的に議論され、解散命令以外に役員解任勧告などが盛り込まれた改正私立学校法が成立した。
文科省の「兵糧攻め」
こうして徐々に対応はしているが、いずれも対処療法。
文部科学省は“大鉈”を振るわざるを得なくなり、「国公私立の垣根を越えた再編論者」として知られる馳浩代議士を文科相に迎えた昨年10月以降、大学再編に向けた動きを早めた。
その一環として、今年度、私立大学の役割と在り方を再考のうえ、経営支援などについて考える「私立大学等の振興に関する検討会議」が設置された。
私大重鎮の黒田壽二・金沢工業大学学園長を座長に21名で構成され、4月13日開催の第一回会議では、文科省から事務次官以下の幹部が顔を揃え、傍聴にも100名以上の関係者が詰めかけるなど、近年まれに見る注目度の高い会議となった。
ただ、大学サイドには次のような警戒感があるという。
「会議名の『振興』は名ばかりで、文科省は時期を見計らって、再編統合と再編整理を含む私大抑制策を議論の場に持ち出してくるんじゃないか」
確かに、第一回は、識者二人が奨学金制度の現状や大学運営の課題を報告。5月24日に開かれた第二回の会議では、大学再生のスペシャリストが登場、ガバナンスの在り方を講義するなど、大学再編を視野に入れた文科省の思惑が透けて見える。
私大を取り巻く環境の厳しさはあっても、それぞれに別々の「建学の精神」を持ち、独立志向の強い私大に、再編や再生の“押し付け”はムリ。
といって、「2018年問題」で、在校生の人生に影響を及ぼす経営破たんが続出するような事態を、手をこまぬいて見ているわけにはいかない。
そこで文科省が、“服従”を迫る材料にしようとしているのが、助成金、補助金を利用した「兵糧攻め」である。
例えば、年間約3000億円が交付される私学助成金。この私大の“米びつ”は、文科省の“さじ加減”によって決まり、これまでも支給条件を厳しくしてきた。
07年度から定員超過、定員割れに応じた減額を段階的に強化し、減額率は最大50%に達している。高額報酬を得ている役員や教職員がいる場合も減額する仕組みを導入。
安倍晋三首相が参院選対策として言及した「返還を前提としない給付型奨学金の創設」についても、「給付型奨学金の原資を捻出するためにも、私学助成金をさらに減額すべき」という意見が強くなっている。
延命策ではもう限界
経営が苦しい私大が、外国人留学生を受け入れる際に申請できる補助金は、“隠れ収入”のひとつとなっている。
生活困難な留学生の授業料免除の補填として、ひとりあたり15万円を単価とし1大学あたり3000万円までが支給される。また、特別措置として留学生ひとりあたり3万円が支給され、1大学あたり最大1000人が対象となる。
だから、補助金欲しさに留学生をかき集める大学が少なくない。日本人学校に足繁く通い、「合格保証」の約束を交わして定員確保に奔走する光景も見られる。
会計検査院が10年度の補助金支出状況を調べたところ、8割の補助金について学校側が留学生の経済状況を調べずに申請、交付手続きを行い、日本私立学校振興・共済事業団も審査をほとんど行わない杜撰さだった。
こうしたあの手この手の延命策ももはや限界。再編整理、統廃合を大学側に任せていたのではラチはあかず、助成金、補助金を利用した締めつけと、「検討会議」などを利用した制度設計などを通じて、文科省は「2018年問題」に本格的に取り組み始めている。