<学力トップの陰で>(2)
学力テストに一喜一憂
2016年6月8日 中日新聞
◆結果が授業内容、左右
二〇一四年八月、公表された四月の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果に、県教委がざわついた。
基礎知識を問う小学国語Aが前年の三位から九位に低下。全科目で三位以内が当然だった県にとって、前代未聞の出来事だった。
「福井は故事成語の理解と使用に課題がある」。
県教委は当時、そう説明し、独自に作った故事成語のプリントを各校に配布。小学五年を対象とした十二月の県学力調査でも類似問題を出した。
県教委が課題克服に躍起になっているころ、テスト結果を分析した記事が教育雑誌に載る。
「○○○で順位が変わっちゃった!?」。
そう題した内容は新発見にあふれていた。
「五十歩百歩」の意味を選ばせる問題の正答率が県によって80%台~40%台と大きくばらついていた事実を指摘。
軒並み低かったのは福井を含め、ある出版社の教科書を使う地域だったことを解き明かした。
理由はその教科書が故事成語を単元ではなく、付録で扱っていたから。
テストは十五問のうち二問が故事成語。
この問題の成否が全体に大きな影響を及ぼしたとして、記事は
「教科書会社で点数や順位が左右された」
と結論づけた。
実は書いたのは県内の小学校教員。
「教科書でちゃんとやった記憶がなかったので、調べてみようと思ったんです」。
当時も今も若狭町の小学校で教える高橋善彦教諭(48)はそう振り返る。教科書会社を非難したかったわけではない。だから最後にこう書いた。
「点数や順位は先生のせいでもなく、子どもたちのせいでもない原因で起きることもあるのだから、いちいち一喜一憂するのをやめませんか」
高橋教諭の元には、県内外の教員から多くの反響が寄せられた。
「コピーして職場で配った」
「新採教員の研修で使いたい」。
それだけ説得力があったというわけだ。
あれから二年。今年も県教委は全国学力テストを独自に分析し、正答率が低かった問いの類似問題集を作成した。
「教科書が原因だとしても、課題なのは間違いない」
と担当者。今月中に各校に配り、一様に授業での活用を求める。
テスト結果によって授業内容が変更を強いられる。高橋教諭は「現場の負担感は変わらない」とため息をつき、こうつぶやいた。
「もっと子どもが喜べる授業にしようという方向にいってほしいのに…」