毎年、寒くなるとアポロ計画の真実さの検証と月の不思議さを考える。
月の科学研究はどうなってしまったのであろうか?月の石の真実度は?1960年代からかなり経った2016年そろそろ月探査を日本が強力に始める時期ではないか。
「SELENE-2」は将来の有人月探査にもつながる。
「SELENE-2は未来の有人探査に必要となる重要技術を開発し、試験するための計画です。有人探査のための先駆的な多目的ミッションなのです」
(岡田氏)。
日本の月探査機「かぐや」の観察結果は基礎的で信頼に値するデーターの気がする。
【月周回衛星「かぐや」搭載スペクトルプロファイラが発見した、月の高地領域におけるカルシウムに富む輝石の分布】
selene.jaxa.jp
本論文は、月周回衛星「かぐや」に搭載されたスペクトルプロファイラ(SP)で取得した可視近赤外連続反射スペクトルデータによって発見された、月の高地領域におけるカルシウムに富む輝石(High Calcium Pyroxene:以後、HCP)の分布について報告したものです。
月主要鉱物の一つであるHCPは、月の表側にある月の海と呼ばれる丸い領域(うさぎ模様の黒い部分)に多く含まれていることが知られています。
一方、主に月の裏側に分布する白く明るい領域(高地領域と呼ばれます)ではHCPは少なく、斜長石やカルシウムに乏しい輝石等の苦鉄質鉱物が混ざったものからなると考えられてきました。
しかし最近のリモートセンシング観測により、高地領域であっても幾つかの衝突クレーターにおいてHCPが大量に存在することを示す観測結果が報告されています。いずれにしても、高地領域とHCPに富む場所についての関連性については、これまでよく分かっていませんでした。
そこで、HCPの持つ反射スペクトルの特徴(1.0μm(マイクロメートル)付近および2μm付近の吸収)に着目し、データマイニング解析を使って、月面上の約7,000万点で取得された全てのSPデータから、高地由来と考えられる反射率の高いHCP(Bright HCP=BHCPと略します)の検出地点の捜索を行いました。
その結果、全球で約4000点を超える地点でBHCPの特長を示すスペクトルが見つかりました(図1)。
その多くは月の海に分布する巨大衝突盆地の縁付近や、月の歴史の中で古い時代に噴出した玄武岩質の溶岩の上に、高地由来物質が覆いかぶさって出来た「クリプトマーレ」と呼ばれる領域で多く見つかりました。
一方で、月の裏側を中心とした、地殻が厚い場所の斜長岩質高地(FHT)と呼ばれる高地領域では、非常に新しいクレーターにのみ集中して見つかることがわかりました。
さらにFHTの高地領域に注目し、BHCPの特徴を示すスペクトルが見られた各クレーターについて詳しく調べたところ、BHCPは主にクレーターの底、縁または放出物が堆積した領域に集中して分布する事がわかりました(図2)。
一方、クレーターの中央丘ではBHCPはあまり見つからず、代わりにほぼ100%の斜長石からなる斜長岩(PAN)が見つかることがわかりました。
クレーター中央丘はクレーターが形成されるときに深い所から上昇することで形成されると考えられています。
この為、今回の結果は、HCPに富む物質がクレーターが形成される前はPANに富む層よりも浅い場所にあったということを意味します。またBHCPがみつかるクレーターはいずれも直径が10kmを超える大きいものに限られ、小さいクレーターでは、BCHPが一切見つかりませんでした。小さいクレーターは浅い部分しか掘り起こしていないと考えると、このことは月地殻の浅い領域には、BHCPに富む物質が殆ど無いということを意味します。
次に、BHCPに富む物質がどういった成分であるかについて調べるために、多重散乱モデルを使った理論的解析を行いました。その結果、PANに少量のHCPを混合したものを考えると、今回観測されたBHCPの反射スペクトルを上手く説明できることがわかりました。
以上の事から、図3のような月地殻構造が推測されます。まず
(1) 月表層から数km~10kmまでの深さでは、PANはあまり含まれておらず、従来考えられてきたように苦鉄質鉱物を含む様々な岩石の混合層からなること、
(2) その下位層にはBHCPに富む物質が存在すること、
(3) BHCPよりもさらに深いところには、月原始地殻由来のPAN層が存在するということ、
(4) BHCPは少量のHCPとPANが混ざったものである可能性が高い
ことがわかりました。
では、どのようにしてこのような層構造が出来たのでしょうか?
今回の観測事実を上手く説明するモデルとして、「月マグマの海の溶け残り説」が挙げられます。
このモデルによると、今回見つかったBHCPは、月原始地殻が形成された時のマグマの海の溶け残り物質が濃集した層から来たものである可能性が考えられます。
このような溶け残りの層が存在する可能性については、過去の研究において理論的には存在が予想されていたのですが、実際に観測的証拠が見つかったのは今回が初めてです。また過去の理論的研究においては溶け残り層の成分が何であるかまでは分かっていませんでしたが、もし今回見つけたHCPが溶け残り層由来であるとすれば、月マグマの海の成分に対して大きな情報を与えることになると考えられます。
解説文 山本 聡 (国立環境研)
月の砂の謎、ナノ粒子モデルで解明?
natgeo.nikkeibp.co.jp
月の表面を覆う砂は、月面を舞うことがあり、さらに深さ2メートルの地点の温度は表面の砂と比べて摂氏にして167度も低いケースがある。
このように奇妙な性質を持つ月の砂にまつわる謎を解明したと、このたびオーストラリアの研究チームが発表した。謎を解く鍵は、ナノサイズのガラス質微粒子にあるという。
微小隕石が月面に衝突すると、月の表面にガラス質の微細な泡が生じる。月には大気がないため、月面に衝突する天体が減速することはない。
そのため、どれほど小さなものであっても「大きなダメージがある」と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で地球化学を研究するポール・ウォーレン(Paul Warren)氏は話す。同氏は今回の研究には加わっていない。
直径約100ミクロン(砂浜のきめ細かい砂粒と同等の大きさ)の粒子でも、月面に衝突すると、その衝撃で月の岩の一部が融解し、ガラス質の泡が形成される。
今回発表された研究でクイーンズランド工科大学のマレク・ズビック(Marek Zbik)氏は、1970年に月から試料を持ち帰ったソビエト連邦の無人探査機、ルナ16号が収集したガラス質の泡を分析。特別なタイプのX線顕微鏡を用い、泡内部の立体画像を構築した。
地球上では、通常こうした泡の内部には気体が入っているものだが、月の場合は
「見たこともないようなガラス状の微粒子が多孔質の網の目のように結びつき、泡の内部全体に広がっていた」
と、ズビック氏は報道機関向けの声明で述べている。
ズビック氏は現在も起きている微小隕石の衝突によって、こうした泡の内部にあるナノサイズの微粒子が放出され、他の砂と混じり合うのではないかと推測している。
このような微粒子は非常に小さいため、その挙動は量子力学の法則に従うが、この法則は一般的(巨視的)な物理学の法則とは大きく異なっている。
「ナノ粒子は非常に小さく、その材質に関係なく、この小ささゆえに他にはない性質を帯びる」
とズビック氏は説明する。
月のナノサイズのガラス質微粒子が、量子力学上どのような性質を持つかは、正確にはまだ明らかになっていない。
しかし、ナノ粒子は一般的に物質の電気的性質や伝導性に影響を与えることがわかっている。この特質を考えると、月の砂が静電気を帯び、月面に舞う性質を持つことや、異例なほどの断熱性を持っていることも、ナノ微粒子が原因とも考えられるとズビック氏は提起している。
◆ガラス質のナノ粒子だけでは不十分?
しかし月を研究する科学者らは、ガラス質のナノ粒子がこの奇妙な量子力学的性質の唯一の原因かどうかには疑問が残るとしている。 NASAのジョンソン宇宙センターの宇宙物質および探査科学部門に所属する研究者、ロイ・クリストファーソン(Roy Christoffersen)氏は、
「我々はこれまで、考え得るあらゆる手法を使って、月の砂に関する広範な解析を行ってきた」
と話す。
クリストファーソン氏によれば、こうした解析により、例えば月の砂に含まれる気孔(ガラス質の泡)の平均的な割合についても、既に把握されているという。
同氏の話では、この量に基づいて考えると、月の砂には他の種類のナノ粒子もふんだんに含まれていなければ説明にならないとのことだ。
「計算すればわかるが、月の砂を構成する物質の中で気孔を持つ物質をすべて集め、そのすべての内部を微粒子で満たし、さらにそのすべてを放出したとしても、その総量では月(にあるとみられるナノ粒子)の量全体を説明することはできないはずだ」。
さらに、月の1カ所から採取したたった1種類の試料だけでは、月面において微粒子に内部を埋め尽くされたガラス質の泡が一般的な存在かどうかはわからないとクリストファーソン氏は言う。
UCLAのウォーレン氏も同意見だ。ウォーレン氏は、ズビック氏の構築した画像は
「こうした気孔の内部を前例のないほどの拡大率で示し、内部の微細な構造を明らかにしたものだ」
としながらも、月の砂を構成する物質に関する
「我々の既存の認識を変えるものになるかは何とも言えない」
としている。
◆地上で混入した可能性も
さらに、ソビエト連邦のミッションで地球に持ち帰られた試料は、他の月の試料ほどクリーンな状態で保管されていなかった可能性があるとウォーレン氏は釘を差す。
「ズビック氏によって記録された微細な粒子が、実際には地球上に戻ってきてから混入した物質だったとしても、私はそれほど驚かないだろう」。
「おそらく本当に月で採取された素材だとは思うが、断言はできない。 アポロが採取した試料を使って、同じ研究をやり直すべきだろう」。
月のガラス状の穴の内部に関する研究は、オープンアクセスの学術誌『ISRN Astronomy and Astrophysics』の2012年号に掲載されている。
【衝突によって放出された粒子からなるクレータの光条の生成について】
selene.jaxa.jp
本内容は、2015年4月(2014年12月4日オンライン公開)付けで米科学雑誌「Icarus」に掲載された論文「Crater-ray formation by impact-induced ejecta particles (T.Kadono et al.)」に関するものです。
月のような天体の表面では、隕石等の衝突によってできたクレータの周りに「光条(レイ)」と呼ばれるパターンが放射状に分布していることがあります。
光条がなぜ明るく見えるかについては過去にも多くの研究が行われましたが、なぜ「不均一に分布するのか」についてはあまり研究されてきませんでした。
そこで、本研究では、衝突実験の結果と「かぐや」の地形カメラのデータを用いた解析の結果とシミュレーション計算とを組み合わせることによって、光条の不均一な分布がどのようにして生成されるのかについて調べました。
ガラスビーズ等を利用した衝突実験の結果、衝突による噴出物は、ゆるい網の目状に分布する事がわかりました(図1)。
この網の目状のパターンは、「かぐや」の地形カメラによって撮影されたGlushkoクレータとKeplerクレータの画像に見られる光条のパターン(図2)と非常に良く似ていることが確認されました。
さらに、シミュレーション計算によって、どのような物性の粒子であれば明瞭な網の目状のパターンができやすいか調べたところ、粒子間の反発係数が小さい状態にそのようなパターンができやすいことがわかりました。
今回の研究成果によって、これまでよくわからなかったクレータの光条の形成プロセスが、粒子の物性によって影響されていることが示され、今後の天体表面における地史の解明に大きな手がかりを与えることが期待されます。