世界最大ウイルス構造解明、進化論争に示唆期待
2017年11月23日 12時36分 読売
自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)は、村田和義准教授(50)(電子顕微鏡学)らの研究グループが、世界最大のウイルス「ピソウイルス」がバクテリアに近い構造的特徴をいくつも持っていることを世界で初めて突き止めたと発表した。
ウイルスが先か、バクテリアが先かの進化論争に新たな示唆を与えると期待される。
ピソウイルスは2014年にシベリアの永久凍土から発見された。大腸菌とほぼ同じ大きさの世界で最も大きいウイルスで、アメーバに感染して増殖する。病原性は確認されていない。
研究グループは2種類の特殊な電子顕微鏡を使い、零下170度の液体エタンで急速冷凍したピソウイルスの構造を自然に近い状態で観察。
この結果、ピソウイルスの大きさは0・8~2・5マイクロ・メートル(1マイクロ・メートルは1000分の1ミリ・メートル)と多様で、内部には膜で仕切られた空間があることがわかった。
また表面は粘液のようなもので覆われており、これまで知られているウイルスとは異なって、バクテリアに近い形態であることがわかったという。
村田准教授は
「ウイルスは究極的に小さく、単純な存在であるという従来の概念を打ち崩す結果だ。どちらが先かではなく、ウイルスとバクテリアの起源は同じで、ウイルスはバクテリアから分かれて進化した可能性が考えられる」
と話している。今回の研究成果は、英オンライン科学誌サイエンティフィックリポーツに掲載された。