アミノ酸も植物の成長には良いようですね。
「味の素」の副産物、機能性肥料に“変身” 世界の農業に貢献を
SankeiBiz 2014.1.31 06:00
世界の食卓で愛用される味の素のうまみ調味料「味の素」。
その副産物として年間200万トンも生じる発酵液には利用しきれなかったアミノ酸や核酸(イノシン酸)が豊富に含まれており、より有効な活用法の開発が課題だった。
同社バイオ・ファイン事業本部は、一連の成分が農作物に及ぼす生育改善効果を解明。
日本では3年前に「機能性肥料」として商品化、“強い農業”を支える助っ人として関係者の期待を集めている。
「サトウキビの糖蜜などを発酵させて、味の素を50万トン生産したときに生じる副産物の量は160万トンと3倍強に上る」
こう解説するのは、同事業本部の海老沢真専任部長。副産物の発酵液は従来、原料調達先であるブラジルなどのサトウキビ畑に有機肥料として散布。これにより
「栄養を畑に返す『バイオサイクル』を実現していた」。
タイなどでは水田やゴム農園向け肥料としても販売され、ピナツボ火山の噴火で被害を受けたフィリピンの農業復興にも一部活用された。ただ発酵液をそのまま利用するビジネスでは
「運送コストがかさむわりに収益性が低い」
という点が大きな課題だった。
そこでアミノ酸や核酸が農作物の生育を促すメカニズムの解明に着手、使いやすい肥料として高付加価値化する取り組みを約10年前にスタートした。
アミノ酸はタンパク質を、核酸は遺伝子を構成する。言い換えれば、どちらも「生命現象の中核を担う物質」(海老沢氏)だ。
農作物への好影響は「以前から経験則として知られていた」が、より効果的な商品として送り出すためには、さまざまな農作物で実験を重ねてデータや使用法のノウハウを蓄積する必要があった。
このため佐賀県内の工場を拠点に九州各地の農家に協力を依頼。07年からは北海道大学との共同研究にも乗り出した。
アミノ酸肥料を葉面散布する実験では、温度管理のトラブルで弱っていたイチゴの樹勢回復やトマトの収量増加を検証。栄養素を葉から直接吸収させることで植物がタンパク質を合成する際のエネルギー消費を低く抑え、病害への抵抗力も高まる効果を確かめた。
核酸肥料の実験では、イネやメロンなどの根に直接散布し、根毛の発育を促す作用を確認した。分析の結果、根を形成する植物ホルモンを増やす効果があるようだという。
「実験してくれた農家の多くが効果に満足し、口コミで協力の輪が1000軒近くに広がった」と振り返るのは同事業本部の小串匡彦専任部長。
実験結果を受けて同社は、11年6月に核酸肥料「アミハート」を、12年12月にアミノ酸肥料「アジフォル アミノガード」を発売した。
発芽促進、樹勢回復といった機能や用法をきめ細かく説明する販売手法で「まずはプロ農家に広げていく」(小串氏)という。
「アジフォル」はブラジルやタイ、米国など海外7カ国でも販売しているが、
「農作物がたくましくなって化学肥料や農薬の使用量が減った」
と環境保護の観点からも好評を得ているという。
今後は農家への指導ノウハウを高め、販売国を広げていく方針。今春には成分を調整して植物のストレス軽減に機能特化した新商品も発売する。
「地球上の気候変動が激しくなっているいま、機能性肥料が果たすべき役割は大きい」と海老沢氏。日本発の発酵技術を、世界の農業に役立てたいと意気込む。
(山沢義徳)