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「絶望的な愚かさ」 地球温暖化研究

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地球工学の温暖化対策で「事態悪化も」 研究

2014年02月26日 11:00 発信地:パリ/フランス
【2月26日 AFP】
 
「地球工学」で地球温暖化を防ぐというSF的な提案は、簡単な解決法とはとうてい言えず、実際には事態を悪化させる恐れもあるとする研究論文が25日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された。
 
かつて「非科学的」とやゆされていた地球工学による温暖化対策は、炭素排出量の急増により地球の気温が2100年までに4度上昇するとも危惧される中で、注目を集めるようになった。
 
太陽光線を反射する鏡を宇宙空間に建設したり、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を吸収するプランクトンを育てたりするアイデアが挙げられているが、大半はまだ実験的または未試験の段階にある。
 
こういった方法の目標は、人類が引き起こす気候変動に拍車をかけている安価で「汚い」エネルギー源から、世界経済が脱却するための時間稼ぎをすることだ。
 
だが今回発表されたこれまでで最も包括的な調査によると、現在の排出傾向が続くと、こういった技術では、気温上昇幅を国連(UN)目標値の2度以内に抑えられる見込みはほとんどなく、むしろ事態をますます悪化させかねないという。
 
論文の共同執筆者、ドイツ・ヘルムホルツ海洋研究センター(Helmholtz Centre for Ocean Research)のデービッド・ケラー(David Keller)氏は
 
「気候工学だけでは、気候変動を抑制するための有効な解決策にはならない」
 
と指摘している。
 
研究チームは、炭素排出量が高い状況が今後も続くという仮定のもとで、地球工学を用いた5つの温暖化対策案の影響を見積もるためのコンピューターモデルを作成した。対象となった対策案は、次の通り。
 
 
・大規模な植林を行い、大気中のCO2を吸収し蓄えさせる。
鉄分で海を肥沃化し、植物プランクトンの成長を促す。プランクトンが増えれば、光合成により海面からCO2を吸収する量も増加する。
・長いパイプを使って、深海の冷たく栄養分に富んだ海水を海面までくみ上げ、プランクトンの発育を促す。
石灰石を使って海をアルカリ化し、化学反応を発生させて大気中のCO2の吸収量を増やす。
・光反射率が高い微粒子の大気中への放出や、宇宙空間への鏡の設置により太陽光線を反射させる「太陽放射管理(SRM)」技術を使用する。
 
 
だがシミュレーションの結果、これらの技術を組み合わせて可能な限り広範囲に適用したとしても、CO2排出が現状のまま続けば、平均表面温度が目標値の2度を超えて上昇するのを回避できないとみられることが分かったという。
 

気候変動に匹敵する悪影響も
 
こうした地球工学は、
 
「それ自体が防ごうとしている気候変動と同程度の悪影響をもたらす恐れがある」
 
とケラー氏は警告する。
 
研究によると、SRMは温暖化を速やかに軽減する可能性のある唯一の方策であることが判明したが、降雨傾向の変化といった最悪の類いの副作用を伴う恐れがある上に、SRMを停止すれば地球温暖化がすぐに再開することになるという。
 
さらに地球工学には、海面を上昇させる、世界の一部の地域で地表面反射率(アルベド)を低下させて局所的な気温の上昇を引き起こす、海から酸素を奪う、オゾン層を枯渇させるなどの恐れがある。
 
「シミュレーション結果は、この種の気候工学が温暖化緩和の不足分を補う可能性は非常に限られているかもしれないことを示している」
 
と論文は述べている。
 
SRMについて、国連の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)は昨年、「実現可能だとすれば」地球温暖化を相殺する可能性があるが、一方で地球規模の水循環(全球水循環)を変化させ、海洋酸性化の軽減にはつながらないだろうと報告した。
 
地球工学プロジェクトは、こうした環境的リスクだけでなく、未知の経済的コストを抱えていたり、法的・政治的な障害に直面したりすることが、これまでの研究で明らかになっている。
 
今回の論文の執筆者らは、地球工学は温暖化緩和への取り組みを「補う」かもしれないが、排出量抑制に焦点を絞る方が得策だろう、と結論付けている。
 

 ■「絶望的な愚かさ」
 
今回のシミュレーションは、いわゆる「RCP8.5」排出シナリオに基づいている。RCP8.5は、IPCCが使用している排出シナリオのうち、最も大きな排出量を想定したもので、2100年までに平均3.7度の気温上昇を予想している。
 
英ブリストル大学(University of Bristol)で自然災害について教えるマット・ワトソン(Matt Watson)氏は、今回の研究について、それだけで気候変動問題を解決する方法や技術などあり得ないことは明らかだと述べている。
 
同氏は、さらに研究を重ねる必要があるとしながらも
 
「炭素を基盤とするエネルギーシステムへの依存度を減らすことが、唯一の理にかなった選択肢である今の状況において、今回の論文は、気候工学による解決策に頼るという絶望的な愚かさに対して時を得た警鐘を鳴らしている」
 
と述べている。
 
(c)AFP/Mariette LE ROUX

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