不思議なことに日本で古来から用いられる麹菌はaflatoxin , AFTを作らないらしい。AFT合成の遺伝子群は有するという。資料2を参照。
中国産の落花生からカビ毒 名古屋市が回収命令
2014年7月3日 21時06分 中日新聞
名古屋市瑞穂区の菓子製造業「ナカムラ」が販売した中国産「味つけ落花生」から、発がん性物質のカビ毒「アフラトキシン」が検出され、市は3日、同社に製品回収を命じた。
この製品は主に、愛知、岐阜、三重各県のスーパー「ヤマナカ」で販売されている。
ナカムラは、中国で加工された落花生を名古屋市内で袋詰めし、販売している。
問題のカビは国内に生息しないため、中国で付着したとみられる。
市は6月下旬、中村区の「ヤマナカ八田フランテ館」店頭で定期検査を実施。
一部の製品からアフラトキシンを検出し、売り場にあった9袋の回収を命じた。食品衛生法はアフラトキシンが含まれる製品の販売を禁じている。
ナカムラは同じ時期に輸入した落花生を使った、賞味期限8月20日~9月26日の972袋を回収している。消費者の問い合わせには午前9時から午後6時まで電話=052(841)8065=で応じる。
市によると、体重60キロの人が、検出された量の発がん性物質を含む落花生半個(0・3グラム)を1年間、毎日食べ続けた場合、肝臓がんのリスクが上がるのは1千万人に1人で、市は
「食べても、即座に体調が悪くなることはない」
と話している。
資料1
生合成と種類
satehate.exblog.jp/9710289/
資料2
カビ毒「アフラトキシン」
(iph.pref.osaka.jp/news/vol39/news39_2)
アフラトキシンの主な汚染食品は、トウモロコシ、落花生、豆類、香辛料、木の実類です。
大豆、小麦、米などの穀類にも低頻度で汚染があります。
アフラトキシンはたいへん熱に強く、一旦作られると、通常の加工調理過程ではほとんど分解せず、除去することが困難となります。
アフラトキシンの発見
1960年、イギリスのイングランド地方で春から夏にかけて10万羽以上の七面鳥雛が次々と斃死する事件が起こりました。当時、原因がわからなかったため、“七面鳥X病”と呼ばれましたが、その後の研究で、ブラジル産ピーナッツミールを飼料として与えたためとわかりました。
ピーナッツに生えていたカビ(Aspergillusflavus)がカビ毒を作ったためで、その原因となったカビ毒は、A.flaとtoxin(毒)をあわせてアフラトキシンと名付けられました。
アフラトキシンには少なくとも16種類の化合物がありますが、毒性や毒力から重要なものは、アフラトキシンB1, B2, G1, G2, M1です。
畑土壌にいるカビが食品や飼料となる農作物を汚染し、保存中に発育してB1, B2, G1 ,G2を作ります。
そして、家畜、特に乳牛がその飼料を食べると、体内でB1が代謝されて、M1となり乳汁中に排泄されます。
そのため牛乳中にM1が含まれることになり、その加工品である粉ミルクやチーズも汚染されることになります。
アフラトキシンの毒性
これらのアフラトキシンは大量に摂取するとヒトや動物に急性の肝障害を起こします。主な症状は黄疸、急性腹水症、高血圧、昏睡などです。
最近では2004年にケニアでアフラトキシン中毒が発生し、317人の黄疸患者が報告され、そのうち125人が死亡しました(患者致死率:39%)。
湿気の多い環境下でトウモロコシを保存したため、保存中にA.flavusが高濃度のアフラトキシンを作り、それを食べたためと考えられました。
2005年には、アメリカでアフラトキシンに汚染されたペットフードを食べた犬が23匹死亡し、同じペットフードでイスラエルでも犬23匹が死亡するという事件がありました。
一方、少量を長期間摂取した場合の慢性毒性としては、原発性肝癌の可能性が高くなります。
特にアフラトキシンの摂取量が高く、かつB型肝炎ウイルス(HBV)罹患率の高い国や地域における疫学調査では、HBV感染はアフラトキシンによる発癌リスクを高めることが示唆されました。
生涯にわたりアフラトキシンB1を体重1kgあたり1ng/日摂取したときの肝臓癌が生じるリスクは、HBV感染者では0.3人/10万人/年、HBV非感染者では0.01人/10万人/年と推定されています。
アフラトキシンを作るカビ
亜熱帯地域に生息するAspergillus属Flavi節に分類されるカビが作ります。A.flavusは主にアフラトキシンB1, B2を、A.parasiticusとA.nomiusはアフラトキシンB1, B2, G1, G2を産生します。
日本古来、麹菌として酒、味噌、しょうゆなどの発酵に使用されてきたA.oryzaeとA.sojaeは、A. flavusとA.parasiticusと形態学的に非常によく似ています。アフラトキシン発見以降、それぞれが同種か否かで論争が続いていましたが、現在では、分類指標とされている遺伝子群の解析やゲノム解析により、A. oryzaeとA.flavus、A.sojaeとA.parasiticuはそれぞれ同種で、馴化株と野生株の関係にあるとわかりました。
麹菌はアフラトキシンを作らないことが確認されていますが、アフラトキシンを作る酵素の遺伝子群はもっています。
菌株の選別や継代の過程でそれらの遺伝子の一部分が欠損し、逆に発に有用な酵素の遺伝子群が発達したと考えられています。
A.flavusは温帯地域にも生息しますが、アフラトキシンを作る株の割合は亜熱帯地域よりずっと少なくなります。
日本では西日本以南の地域でアフラトキシン産生株が検出されたことがあります。しかし、現在まで、規制値(10μg/kg)以上のアフラトキシンB1が検出された国産食品はありません。
つまり、アフラトキシンに関しては国産食品ではなく輸入食品(原材料を含む)からの曝露(摂取)をいかに少なくするかが課題となります。