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「インターン」活況、高額報酬も 採用売り手市場、“接点”求め競争
SankeiBiz 2014.7.17 06:51
新卒学生に対する採用意欲が高まる中、大学生が企業で実際に働く体験をする「インターンシップ」が増加している。
優秀な学生に自社のことを知ってもらいたい企業側と、就職活動を少しでも有利に進めたい学生側の考えが一致しているためだ。
新卒学生の採用が売り手市場へと向かう中、企業は新規事業の立ち上げを経験させたり、一部では高額報酬を提供するなどし、学生のやる気を引き出している。
三井住友海上火災保険は今年から、インターン制度を刷新する。これまで夏季の1週間のみのプログラムだったものを2週間に延ばす。夏季の通常のインターンに加え、秋に現場実習を実施するほか、冬に学生が考案したビジネスプランを発表するコンテストを開く。
3年ぶり復活
インターンの刷新は、
「自ら挑戦する人材」(広報担当)の採用につなげる狙い。従来の短期のインターンでは学生の資質がみえにくい。より長期のプログラムで「学生とじっくり接点を持てる」
(同)利点がある。また、現場実習をベースにしてビジネスプランを作っていく過程で、ほしい人材を育ててしまう狙いもある。
ローソンは3年ぶりにインターンシップ制度を復活させる。「プレミアムインターン」を設定し、新規事業プロジェクトを立ち上げる体験プログラムを提供。同社の担当者は
「役員との面談などもセットされる中で、玉塚元一社長らが参加することになる」
と話す。
ローソンのようなコンビニチェーンでは、店頭の販売スタッフは人手が不足している。新卒社員の募集に関しては、「それほどの不足感はない」(人事関係者)が、それでも、優秀な人材の取り合いは例年より激しくなっているのが現状だ。
一方、高額の報酬を用意する企業も出てきた。
スマートフォン(高機能携帯電話)向けの無料通話・簡易メールサービスで急成長を続けているLINE(東京都渋谷区)は8月、学生向けのインターンシップを実施する。技術者向けと総合職向けの2コースを用意する。技術者向けコースは8月4~29日の約4週間で、交通費以外に報酬40万円を用意するといい、話題となっている。
ソーシャルゲーム大手のディー・エヌ・エー(DeNA)は夏に4日間の「サマーインターンシップ」を実施。新規事業の企画立案などに取り組み、毎年数十人が参加する。参加料として10万円が支給されるほか、優秀な学生には米国・シリコンバレーの企業へのツアーなども用意されている。
同社では
「なるべく早く学生と接点を持ちたい。インターンシップを経験して入社する人も多く、会社を知ってもらういいきっかけになる」
と狙いを話す。
さらに、異業種が共同で実施する「コラボインターンシップ」も注目されている。事務機大手のコクヨが中心となって2009年から始めているが、今年はコクヨ、カゴメ、日本ユニシス、アステラス製薬、阪急電鉄など7社が参加し、「過去最大のにぎわい」(関係者)となっている。関東で3社ずつ2回、関西で1回の計3コースがそれぞれ5日間の予定だ。
解禁後倒し契機
学生からすれば、イメージで仕事をみているなかで、実際の仕事とのギャップは大きい。
「複数の、それも業態の違う企業でインターンを経験すれば、学生の仕事選びにも役立つ」
(担当者)。企業側としてもせっかく採用はしたものの、
「自分のやりたい仕事ではない」
として短期でやめることも少なくできるとみており、今後も拡大させる考えだ。
インターンシップを実施する企業が増えているのは、景気回復で採用に積極的になっていることに加え、2016年卒(現在の大学3年生)の採用から、採用情報の解禁が3年生の12月から4カ月後ろ倒しされることが背景にある。
4年生になる直前まで企業が学生と接点を持てないためだ。
三菱自動車も採用活動の開始時期が遅くなるのを受け、
「新たにインターンを設ける方向で検討している」
(広報)という。
就職情報会社マイナビが5月に実施した調査では、16年卒の学生を対象にインターンを行う、または行う可能性があるとした企業は52.9%。初めて行うとした企業も6.7%だった。
もちろんインターンは採用活動ではないため、各社はそこで“青田買い”はしない。
だが、人材獲得競争が激しくなる中、優秀な学生に少しでも自社を印象付けようと、工夫を凝らす企業が今後も相次ぎそうだ。