線香花火は奥が深いですね。化学者にとっても良く分からない現象です。
夏を代表するのは線香花火でした。もちろん皆、国産品の時代。線香花火の最後の消えるまでのプロセスが子供心を引き付けたものでした。Kidsラボでは絵の具の化学実験は行いましたが線香花火の実験はペンディングのままでした。
さて線香花火の発光メカニズムは?島田 肇、小林 諒平両氏の「」によると以下の通りである。
① 花火の原料
そもそも花火とは火薬(可燃剤と酸化剤の混合物)と金属の粉末を混ぜて包んだものに火をつけ、
燃焼・破裂時の音や火花の色などを鑑賞するためのものである。
花火に火をつけたとき、ある温度以上になると酸化剤が分解し可燃剤燃焼のための酸素を供給する。その可燃剤の燃焼によって高温が発生し火花剤や色火剤といった金属粉末やその他の様々な組成物が反応する。こうして花火に見られる効果が得られる。
実際の火薬には以下の薬品等が用いられる。
・可燃剤・・・硫黄(S)、三硫化アンチモン(Sb2S3)、赤リン(P)、炭粉(C)
・酸化剤・・・硝酸カリウム(KNO3)、三酸化二鉄(Fe2O3)、鉛丹(四酸化三鉛Pb3O4)
・酸化剤・・・硝酸カリウム(KNO3)、三酸化二鉄(Fe2O3)、鉛丹(四酸化三鉛Pb3O4)
鉄と硝酸カリウム、赤燐くらいかなと思っていたのですが三硫化アンチモンまで入っているのですね。そして発光色。
② 花火の特殊効果
花火の特殊効果とは火花、熱、音、色、煙、運動などを指し、その効果を示す煙火組成物を火花
剤、発熱剤、発音剤、色火剤、発煙剤などという。例えば、火花剤は鉄粉、アルミニウム粉、マグ
ネシウム粉、チタン粉といった金属粉末であり、高い燃焼反応温度を与えると、火花を散らすよう
になる。それぞれ特徴的な火花を出すので、花火の効果によって使い分けられる。色火剤は特定の
金属による炎色反応を利用して花火の光に色をつけるものである。
・火花剤・・・鉄粉(Fe)、アルミニウム粉(Al)、マグネシウム粉(Mg)
・色火剤・・・<赤色>塩化リチウム(LiCl)、塩化ストロンチウム(SrCl2)
<黄色>炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、塩化ナトリウム(NaCl)
<青色>酸化銅(Ⅱ)(CuO)、硫酸銅(Ⅱ)(CuSO4)
<橙色>炭酸カルシウム(CaCO3)
<緑色>硫酸バリウム(BaSO4)
・色火剤・・・<赤色>塩化リチウム(LiCl)、塩化ストロンチウム(SrCl2)
<黄色>炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、塩化ナトリウム(NaCl)
<青色>酸化銅(Ⅱ)(CuO)、硫酸銅(Ⅱ)(CuSO4)
<橙色>炭酸カルシウム(CaCO3)
<緑色>硫酸バリウム(BaSO4)
④ 実験用線香花火
線香花火は黒色火薬と鉄粉を混合させたものである。黒色火薬とは炭粉と硫黄を可燃剤とし硝
酸カリウムを酸化剤として用いる。一本あたりの原料の質量は以下のとおり。花火の総質量は
0.10g である。
・炭粉(C)0.025g
・硫黄(S)0.015g
・硝酸カリウム(KNO3)0.060g
・鉄粉(Fe)0.010g
・硫黄(S)0.015g
・硝酸カリウム(KNO3)0.060g
・鉄粉(Fe)0.010g
硫黄は融点が低いため(119℃)花火中で高温の液体となり反応を助ける働きがある。線香花火の
火玉は硫黄の液体とほかの煙火組成物がドロドロになって球状にまとまるものである。
そして興味深い記述が下記サイトにある。
1、線香花火 ota-hanabi.net/gangu3-6
夏のおもちゃ花火の定番、「線香花火」。日本人の心ともいえるくらい皆さんに浸透していると思います。この線香花火よく知っているようで実体についてはあまり知られていません。
どうしてこのような現象が起こるのか全てが解明されていません。神秘に満ちた花火なんです。
火薬の量も0.06から0.08gの世界です。 0.1g以上にすると「線香花火」にはなりません。玉が落ちてしまうのです。
よく、カクテルなどに付いてくる「スパーク」も火花を出していますが、あれは金属の火の粉です。しかし「線香花火」の火花は炭なんです。よく似ていますが、全然違う素材なのです。
また、皆さんがいう線香花火は「手牡丹」というものです。姉妹品で藁(わら)の先に火薬の付いているもので「スボ手」というものがあります。これも線香花火です。
原料はとってもシンプル。
和紙(こうぞ紙)と硝石と硫黄と松煙と麻炭。これだけあればできるんです。でも、あの綺麗に咲く線香花火はなかなかの技術が必要です。
線香花火の和剤(火薬)の配合例
硝石(60%)、硫黄(25%)、油煙(4%)、麻炭(8%)、アントラセン(3%)
まず、紙縒(こより)をよることができること。
最近この紙縒をあまり見かけませんが、昔は誰でもできたものです。
日本人の器用さがうかがえるこの紙縒が線香花火の命です。
程良く堅く縒ることであの綺麗な松葉のような火花が飛ぶのです。
また、火の玉がなかなか落ちないのは、ここら辺が関わっているのです。火薬の配合自体も当然関わり合っていますが、この紙縒の仕上がりが決め手となるのです。
もう一つは、和紙。パルプの紙つまり洋紙では出来ません。紙の繊維方向が不規則でもんでも破れない薄くて丈夫な半紙、しかも「楮」(こうぞ)で作ったものが最高。最近は極上ものが手に入らないそうです。
最後に原料の中で一番重要なのは、松煙です。
松煙は松の木の切り株を焼いたときに出るすす(油煙)です。松の枝ではいけないのです。今これがはっきりいってありません。
そこで分子構造まで似たものを合成して作っています。つまり、天然物の松煙がないので昔と現象が違っているのです。
輸入物も松煙を使っているとは思いますが?違うんですよね。 業界では、「線香灰」というもので通用しています。これは、合成品で本物ではありません。
昔見た線香花火は、この楮(こうぞ)紙と松煙を探して頂ければ完璧にできます。
和紙は、「美濃半紙」、松煙は、松の切り株のところでしかも数年たったものどなたか、
割安に作っていただけますか?
国産の線香花火はこの長年の経験が生んだ芸術品です。でも、手作業で行っていますのでばらつきがあり、すべてが完璧に思った通りになるとは限りません。火薬の
原料と配合比、紙縒のより具合この全てが揃って最高のものとなるのです。
国産線香花火、京で再評価 高級志向で需要伸び
2013年08月01日 14時30分 京都新聞
国産の線香花火が再評価されつつある。
人件費が安い中国産に押されて絶滅の危機にあったが、独特の美しさを懐かしむ声も根強く、高級品として需要が伸びている。手作業による希少品だが、京都でも和装企業がオリジナル商品を発売するなど徐々に人気に火がつき始めている。
江戸時代に誕生した線香花火は、1970年代から中国産が流入し、現在は9割以上が輸入品とされる。国内の生産業者は相次いで撤退し、業界団体などによると、一時は1社に減り、現在は3社が生産を続けているという。
国産は使う和紙や火薬の配合が違い、火玉が長持ちするほか、「松葉」「柳」などと形容される火花の変化を楽しめるのが特徴だ。
ただ、手作りのため生産量は少なく、福岡県の筒井時正玩具花火製造所では、職人30人で1日6千本程度が限界といい、高級化路線に転換。
「昔あった本物の線香花火を楽しみたい」という中高年らに好評で、受注を伸ばしている。
一方、京都ではおもちゃ屋以外にも国産が広がりを見せている。
京友禅の千總(京都市中京区)は2011年から特注品の企画販売を始め、25本入り3150円と高額ながら毎年千セットが完売する好評ぶりだ。
自社の着物と同じく国産にこだわることへの共感や「着物で花火を楽しむ文化も受け継ぎたい」との思いから始め、今年は清水寺で祈とうを受け「人と人の縁が結ばれるように」との願いも込めた。
三条通烏丸西入ルの店鋪「SOHYA TAS」などで販売し、「火花の美しさがまったく違う。手作りのよさを味わってほしい」とアピールする。
藤井大丸(下京区)の雑貨店「ジェイピリオド」でも、420円(15本入り)から、持ち手に花型をあしらった桐箱入り1万500円(40本入り)の品まで7種を販売する。カップルを中心に、「内祝いや結婚式のプチギフトとして買う人が多い」といい、売り上げは昨年の2倍に届きそうな勢いという。
インターネットで花火専門店「pachipachi」を運営するデザイン会社「webi design」(京都市右京区)も、昨年はすぐに完売し、ネットでは1万円から5千円台が売れ筋という。
chem.sci.utsunomiya-u.ac.jp/v5n1/sugiyama/sugi2.pdf