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台湾の毒でんぷん騒動

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何度もこのブログで取り上げているがデンプンは簡単なようで難しい題材である。Wikiの説明をまず聞きましょう。澱粉(C6H10O5)nは、線状(アミロース)と、分岐した(アミロペクチン)重合体との混合物である。
 
 澱粉の消化の化学 - α化とαデンプン
 
デンプン(澱粉)あるいはスターチ(英語: starch)(ラテン語; amylum)
 
イメージ 3分子式(C6H10O5)n の炭水化物(多糖類)で、多数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子である。構成単位であるグルコースとは異なる性質を示す。種子や球根などに多く含まれている。
 
高等植物の細胞において認められるデンプンの結晶(デンプン粒)やそれを取り出して集めたものも、一般にデンプンと呼ばれる。
 
デンプン粒の形状や性質(特に糊化特性)は起源となった植物の種類によりかなり異なる。トウモロコシから取り出されたものを特にコーンスターチと呼ぶ。
 
イメージ 4デンプンはその構造によってアミロースとアミロペクチンに分けられる。デンプンの直鎖部分は、グルコースがα1-4結合で連なったもので、分岐は直鎖の途中からグルコースのα1-6結合による。
 
動物における貯蔵多糖として知られるグリコーゲンはアミロペクチンよりもはるかに分岐が多く、3残基に一回の分岐(直鎖部分の長さは12~18残基、分岐の先がさらに分岐し、網目構造をとる)となり、アミロースやアミロペクチンとは区別される。トウモロコシの種子などでもこのグリコーゲンの顆粒が存在する。
 
2013年、台湾にて無水マレイン酸を含むデンプンが流通していることが発覚、毒性を理由に回収された。
 
イメージ 5無水マレイン酸が添加された目的は食感の向上であったが、無水マレイン酸は人体に有害であり、本来は工業用途に限られている。
 
 
無水マレイン酸の構造dic.nicovideo.jp
イメージ 1
 
予想される反応 ekouhou.net    一級水酸基の化学修飾(エステル化)なのですね。
イメージ 2

無水物は、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、及びそれらの混合物からなる群から選択されるのが好ましい。化学的変性剤は、混合物の澱粉重合体の約2重量%~5重量%であるのが好ましい。
 
トマシク(Tomasik)その他による、Starch 47,96(1995)では、押出し機中で種々の量の水分(18、20、及び30%)を含むトウモロコシ澱粉を、無水コハク酸、無水マレイン酸、及び無水フタル酸と反応させ、澱粉エステルを形成している。押出し中、媒体としてpH8又はpH9の炭酸塩緩衝溶液を添加している。アルカリ性媒体中で環式無水物と共に澱粉を押出すと疎水特性を基礎とする陰イオン性澱粉を製造する手軽な方法を与えることが実証されている。
 
しかし、この方法は、化学性及び押出し過程に起因する幾つかの重大な短所を有する。例えば、得られる澱粉溶融物の粘度が大きいため、約130℃の温度でこれらの試料を押出すことは極めて困難である。また、水を使用することも最終的生成物の加工及び品質で極めて問題が多い。
 
化学的変性可塑化澱粉(CMPS)を、澱粉と、有機二塩基酸又はその酸の無水物と、可塑化剤を存在させて、任意に遊離ラジカル開始剤を用い、また任意にナノクレイを配合し、反応押出し法で反応させることによって製造する。澱粉は熱可塑性であり、慣用的熱可塑性澱粉よりも低い粘度を有する。CMPSは、少なくとも部分的に生物分解性である澱粉重合体組成物を製造するのに有用である。
 
製紙工業とデンプンの化学
 
町田誠之** jstage.jst.go.jp/article/jtappij1955/17/11/17_11_692/_pdf
 
デンプンに不飽和基を導入して,これよりグラフト重合を行なうこともできる。たとえばデンプンをアセトンまたはメチルエチルケトンに分散させて,アルカリの存在でハロゲン化アリルを作用させるとデンプンアリールエーテルが得られる45)。このアリールデンプンはそれ自身印刷用インキの展色剤などの用途をもつものであるが,アリール基からビニル重合を普通の開始剤を使って行な:わせることができる。
 
デンプンに無水メタアクリル酸を作用させると,メタアクリル酸エステルが得られる。47)平均置換度2.9のものはピリジン,四塩化炭素にわずかに溶ける以外は多くの有機溶媒に不溶である。二重結合にさらに反応を行なって各種の誘導体を合成することができる。同様に無水マレイン酸を反応させたデンプン誘導体も知られ,同様な新しい誘導体の合成原料とされる。
 
 
 違法食品添加物事件が海外波及-食の安全に揺れる台湾
 
2013.6.8 07:00 産経
 
屋台などで人気のタピオカミルクティーのタピオカなどもやり玉にあがった(吉村剛史撮影)
 
 戦後、蒋介石とともに中国大陸全土の料理が渡来し、グルメファンを魅了してやまない台湾だが、露店街で人気のビーフンなどの麺類、日本同様に台湾のコンビニエンスストアでは定番となっているおでんの練り物などに、違法な食品添加物が使用されていたことがわかり、台湾当局が「食品衛生管理法」の強化に乗り出した。
 
昨年は海外から700万人の旅行客が訪れた台湾だけに「イメージダウン」「観光産業に影響する」との危惧も広まっている。(台北 吉村剛史)
 
 騒ぎの発端は5月13日。台湾の行政院衛生署(厚労省に相当)の食品薬物管理局の発表だった。
 
 同局が、寄せられた情報をもとに市中の食品などを検査したところ、認可されていない無水マレイン酸を加えたでんぷんを使用した製品が出回っていたことが判明した。
 
 同酸は本来は食品の包装用紙などに使用される化学原料。これを加えたでんぷんを使用した場合、食品にもちもちとした食感を加えることができるという。
 
 急性毒性は低く、少量の摂取では、ただちに健康被害は生じないものの、大量に摂取した場合、腎臓機能に障害を引き起こすおそれがある。
 
 この発表を受け、台湾各地の当局による製品や原料の回収が始まったが、タピオカミルクティー(珍珠●(=女へんに乃)茶)のタピオカ、芋団子といったスイーツをはじめ、肉団子、餃子などの点心など、大量の市販商品に使用されていたことが相次いで発覚。
 
 5月27日には問題となったでんぷん約230トンの廃棄処分も発表されたが、その後、別の工業用添加物や期限切れの凝固剤、防腐剤などの使用が、ロングセラーのプリンや寒天、アイスミルクなどでも浮上し、「毒澱粉(でんぷん)」の余波は拡大。
 
 商品の撤去に次ぐ撤去で、コンビニエンスストアの棚が一時ガラガラとなった。
 
罰則強化の中、世界に波及
 
 「美食で知られている台湾のイメージダウン」「観光客が夜市(夜店)で食べ物を買わなくなる」との懸念も拡大する中、事態を重視した馬英九総統は29日、行政院に海外メディア向け記者会見を指示。
 
 関連する製品や業者の情報、商品の流通状況などを公表させるとともに、食品衛生管理法の強化などを求めた。
 
 事実31日には、食品の検査管理や、違反者への罰則強化が盛り込まれた同法の修正草案を立法院(国会に相当)で通過させ、認証審査機関を通じ、6月1日以降は業者、店舗向けの安全証明書を発行させるなど、当局は善処に前向きな姿勢の強調に追われた。
 
 だが、シンガポールやマレーシアでも台湾から輸入した製品から相次いで違法食品添加物が検出され、禁輸措置がとられるなど影響はたちまち海外に波及。
 
 6月に入ると香港では当局の指導で台湾製の麺類が自主的に撤去され、また4日には日本の横浜市の輸入業者が台湾から約3トンもの「毒でんぷん」を購入した可能性が浮上。
 
 台湾同様に日本でも食品衛生法に抵触するため、業者が自主回収に追われる騒ぎの中、台湾の外交部(外務省)は、台北で各国出先機関に対し説明会を開いて、信頼回復にかける姿勢をアピールした。

経済的影響か

 「食管局 隠匿毒澱粉三個月」
 
 台湾の週刊誌「壱週刊」6月6日号は、無水マレイン酸を加えた「毒でんぷん」の情報を、衛生署食品薬物管理局が2月に得て、3月に実際に商品から検出していたことを暴いた。
 
 情報のキャッチから5月13日まで公表されなかったことに関し、隠蔽疑惑を報じたかっこうだが、同局では公表の遅れについて、誤検出の可能性もあったため、調査に時間がかかったとし、「隠匿(隠蔽)」ではないと反論している。
 
 行政院主計総処が5日発表した5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0・74%上昇の102・24で、上昇幅としては昨年3月以来の最低となった。
 
 台湾の有力紙、自由時報(6日付)は、なかでも外食の上昇幅が2011年8月以来最低の1・66%増だったことに対し、「毒でんぷん」事件が消費などに心理的影響を与えた、と分析し、経済的影響が生じている可能性を指摘している。

食品安全関係情報詳細
fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu03810190369
 台湾行政院衛生署食品薬物管理局は5月13日、デンプン関連製品からマレイン酸が検出されたことを公表し、食品業界に対し加工デンプンは認可されたもの(※1)を使用するよう注意喚起した。
 
 少数の業者が未認可の無水マレイン酸加工デンプンを使用した可能性があるとの情報に基づき、同局は直ちに資料を収集し、検査技術を確立するとともに、市販のデンプン類及びデンプン関連製品を対象にサンプリング検査を実施した。その結果、デンプン類25検体及びデンプン関連製品49検体の計74検体のうち、デンプン関連製品5検体からマレイン酸が検出された(内訳:甘い菓子(芋団子等)2検体(386ppm、352ppm)、麺1検体(46.4ppm)、火鍋の材料2検体(496ppm、481ppm)※2、※3)。
 
 更なる追跡調査の結果、製品に(無水)マレイン酸が直接添加されたのではなく、未認可の無水マレイン酸加工デンプンが使用されていたことが原因であることが分かった。
 
問題の製品及び加工デンプンの出所は自劉記粉園(嘉義県)、健美食品有限公司(新北市)、賞味佳食品有限公司(新北市)、長勝食品厰(高尾市、別名は慈恵食品有限公司)等の製造工場で、さらにその原料の出所は協奇澱粉厰(台南市及び新北市)の加工デンプン、怡和澱粉有限公司(新北市)のサツマイモ粉だった(上記6企業の9製品から28.8ppm~4,862ppmのマレイン酸が検出された。地方当局はマレイン酸が検出された全ての製品及び原料の回収等を命じた。
 無水マレイン酸は米国食品医薬品庁(FDA)や欧州連合(EU)で認可されている間接食品添加物で、水と反応しマレイン酸になり、食品と接触する包材に使用することができる。
 
また、法で認められている食品添加物のうち、リンゴ酸やフマル酸等には少量のマレイン酸が含まれることもあるため、一部の食品中に少量のマレイン酸が含まれることは合理的である。
 
しかし、今回一部の食品からマレイン酸が検出された原因は未認可の無水マレイン酸加工デンプンを使用したことだった。
 
 科学文献資料によると、マレイン酸の急性毒性は低く、ヒトに対して生殖・発生毒性や遺伝毒性等を持たず、発がん性もない。EUの評価資料では、成人の耐容一日摂取量(TDI)は0.5mg/kg体重/日とされており、60kgの成人で計算すると、一日当たり許容できる量は30mgとなる。
 
今回検出された製品を例にとると、マレイン酸が400mg/kg(ppm)含まれる製品を一日30g喫食すると仮定した場合、マレイン酸の摂取量は一日当たり約12mgとなる。
 
これは60kgの成人が一日あたり許容できる量である30mgと比べ、安全の範囲内である。よって、適量を喫食するのであれば、健康上の危害にはならない。
 
 

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