確かにスターリングエンジンは静粛ですね。熱源と冷却源があれば良い。世界最高峰の潜水艦に導入とは素晴らしい。
スターリング機関 (Stirling cycle engines)
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シリンダー内の気体を外部から加熱・冷却し、仕事を得る外燃機関である。理論的熱効率が高いが、現時点での実装技術では、機関の体積あたりの出力が低く、大出力を得ようとすると機関が大型化する欠点がある。
スウェーデンの造船会社コックムスが1960年代に研究に着手し、1983年からプロトタイプ試験を開始したものがよく知られている。
同社の方式では、液体酸素を気化して得られた酸素と燃料(ケロシン)の燃焼熱(約800℃)をシリンダー内のヘリウムガスに伝え、このガスの膨張と海水冷却による圧縮の繰り返しによってピストンを動かす。
コックムス社は1988年から、スウェーデン海軍のネッケン級潜水艦1番艦ネッケン (sv) で実用試験を実施し、5ktで14日間の連続潜航に成功した。その成果にもとづいて建造された実用艦級がゴトランド級潜水艦である。ゴトランド級に搭載されるMk.2 V4-275R型機関は75kWの出力を発揮する。
日本でも同社より技術導入し、練習潜水艦「あさしお」を改装し実用試験を実施、その成果を踏まえ平成16年(2004年)度計画において海上自衛隊が潜水艦(そうりゅう)を建造し、スターリング機関を採用した日本で初の実用潜水艦となった。
潜水艦「けんりゅう」 世界最高峰の技術を結集、機密に満ちたその艦内は
2014.11.14 06:00更新 産経
その巨体は、まさに「鉄の鯨」に見えた。海上自衛隊の最新鋭潜水艦「そうりゅう」型の4番艦「けんりゅう」だ。
海自は10月30日、広島県呉市の海自呉基地で、記者団に艦内を公開した。
「カメラやカメラ付き携帯電話はここに置いてください」
乗艦直前、海自関係者が記者団のカメラを回収していく。潜水艦は「機密の宝庫」とも呼ばれ、関連する防衛秘密の数も公表されていない。
特に、そうりゅう型は原子力を使わない通常動力型では世界最大で、日本の先端技術が結集されているため、厳戒態勢が敷かれている。
艦内に入るためには、上甲板から垂直に降りるはしご(ラッタル)をたどらなければならない。革靴だったため、滑り落ちてしまいそうで怖い。ようやく艦内に入ると、通路も部屋も狭く感じる。魚雷の横には、ところせましとベッドが置かれていた。潜水艦はこんなものかと思ったが、そうりゅう型は特別に狭いそうだ。
その原因はディーゼルエンジンに加え、スターリングエンジンを搭載しているからだ。前世代のおやしお型の士官室は原則3人部屋だったが、そうりゅう型では
「10人が一緒に入るタコ部屋の士官室もある」
(けんりゅう関係者)という。
そこまでして搭載したスターリングエンジンこそが、そうりゅう型の特色だ。
吸気筒を水上に出して大気中から酸素を取り込む必要がなく、第3国の哨戒機や水上艦艇から見つりにくい非大気依存推進(AIP)機関なのだ。
低速航行であれば、長時間潜っていられる「水中持続力」が格段に向上した。
爆発を伴わないため、静粛性にも優れている。
「潜水艦の最大の強みは隠密性だ。いるかどうか分からないところから、いきなり魚雷攻撃を仕掛けられる。潜水艦1隻で空母を沈めることもできる」
海自関係者はこう語る。
そうりゅう型の隠密性を確保しているのは、スターリングエンジンだけではない。船体全面には、敵の音波探知機(ソナー)の音波を吸収したり、反射したりするゴムタイルを装備している。
潜望鏡を水面から出す時間を短縮するため、一瞬でデジタル画像を録画し、後にゆっくり再生・確認することも可能だ。
艦内のいたるところでは、スピーカーやパイプなどあらゆる機器の振動を抑えるためにゴムが備え付けられていた。娯楽用のテレビもヘッドホンで見るなど、敵に音を聞き取られずに隠れることを徹底している。
これだけ隠密性を課されれば、潜水艦乗組員はさぞかし“お堅い”人物が多いかと思いきや、そうでもない。海自内で潜水艦乗りといえば、総じて性格が明るく、豪快な人というイメージで語られることが多い。
それもそのはず。潜水艦乗組員に選ばれるのは、心理適性検査(CAS)などでストレス耐性が強いと判定された自衛官ばかりなのだ。海自幹部は「潜水艦勤務は密閉された空間で何カ月も過ごさなければならない。ストレスに強い人間でなければ務まらない」と明かす。
政府は従来の潜水艦16隻態勢から22隻態勢へと増強を進めている。背景には、米軍の行動を阻む「接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略」を追求する中国軍の動向がある。これに対する警戒・監視活動で枢要な役割を果たすのがそうりゅう型潜水艦だ。
世界がうらやむ最新鋭潜水艦の真の敵は、中国とストレスなのかもしれない。
(政治部 杉本康士)