スズキ首位奪還の原動力「S-エネチャージ」 独自の“ハイブリッド技術”
SankeiBiz 1月26日(月)8時15分配信 headlines.yahoo.co.jp
2014年の新車販売台数で、ダイハツ工業を振り切り、8年ぶりに軽自動車首位を奪還したスズキ。
原動力になったのは新ジャンルの軽「ハスラー」だけではない。
主力車種「ワゴンR」に導入された独自の低燃費技術「S(スーパー)-エネチャージ」も大きく寄与した。
減速時のエネルギーを使って発電し、電装品のほか、加速時のエンジンのモーターアシストや再始動に活用する。スズキ独自の軽用“ハイブリッド技術”だ。
大幅改良して昨年8月に発売され、12月までの累計販売台数が7万台を突破したワゴンR。売りであるガソリン1リットル当たり32.4キロというクラストップの低燃費と、広々とした室内空間に貢献したのが、大幅改良に合わせて導入されたS-エネチャージだ。
S-エネチャージは、モーター機能付発電機(ISG)に専用リチウムイオンバッテリーを組み合わせたシステム。
サイズに制限がある軽自動車に搭載しやすいようコンパクトな設計にしている。
仕組みはこうだ。
車が減速する際のエネルギーを利用してISGで発電し、リチウムイオンバッテリーともう1つの鉛バッテリーに充電する。その電気でオーディオやヘッドライトなど電装品の電力の一部をまかなう。
さらに、燃料を多く必要とする加速時に、ISGがモーターアシストを行うことで、加速性能は維持したままエンジンの燃料噴射を少なくし、燃料消費を抑制できる。
またISGはスターターモーター機能を持っており、アイドリングストップからのエンジンの再始動をベルトを使って静かでスムーズに行ってくれる。
一般的に自動車は、オルタネーターと呼ばれるエンジンの回転を利用した発電機を搭載。発進や加速の際にも常時発電が行われており、結果的に燃料消費が増えてしまう。
S-エネチャージは、減速時に集中的に発電することで、エンジンに負担をかけず、燃費を無駄にせず稼ごうというのがコンセプト。
「より燃費を良くするという競争は続く」
(鈴木修会長)中でスズキが出した一つの回答だ。
発電機の効率アップと同時に、充電した電気の受け皿となるバッテリーを2つ(リチウムイオン・鉛)用意した。
その点は、ワゴンRが12年に全面改良した際に搭載した「エネチャージ」と同じだ。
しかし、エネチャージがバッテリーにためた電気をオーディオなど電装品のみに使うのに対し、S-エネチャージは駆動力にも使用している。このため、ISGは発電効率をエネチャージ用の発電機よりも3割向上させた。
もっとも、専用のモーターや大容量バッテリーを搭載するハイブリッド車(HV)と違い、モーター走行はできない。
ただ、軽自動車にHVシステムを搭載すれば、軽自動車の持ち味である低価格やコンパクトなサイズを維持できなくなる恐れがある。S-エネチャージなら、軽の良さと低燃費を両立できる。
ワゴンRの販売は好調で、昨年末時点でのS-エネチャージ車の割合はワゴンR全体の約6割を占める。
今後、他の車種にも搭載を検討している。
スズキ幹部は
「(燃費が)40キロの車をお客さまに届けなくてはいけないというのが、われわれの考えであり、覚悟だ」
と話す。首位から陥落したダイハツも低燃費化技術に取り組んでおり、開発競争は今後も続きそうだ。
(田村龍彦)