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フェノールの分子間水素結合の検出

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分子内および分子間水素結合の研究は大学4年生からの長年の古くて新しいテーマである。最初の稚拙な論文はいまでも輝いている。自分で英文を書き、教授に赤ペンで真っ赤に直されたものだ。
 
今のドクターや若手研究者には英文も自分ではなくて教授に任せる時代である。若者の成長をゆるりと待つ時間などないのである。良いのか、悪いのか?
 
 
さてフェノール(置換フェノール)こそ分子の中でベンゼンに次いで興味深い分子である。特に濃度に依存した分子間水素結合の有無は赤外で研究できるが、学生実験用に採用しようとする報告であるらしい。
 
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茅 さんの研究実感が面白い。ダイナミックな構造自体に機能が隠されているということ。
 
 
My Favorite Research 茅 幸二
 
「ダイナミックな分子および分子間運動が,集合体の機能を創りあげている」
 
という事実を実感したという。
 
 
電子状態解明を目指した「探索の化学」化学 Vol.69 No.3( 2014)
 
kagakudojin.co.jp/kagaku/web-kagaku01
 
アルコールルと水はともに水素結合により周囲と結合する分子であることがわかるが,フェノール分子がどのように水素結合を介して水に結合し,溶液となっていくのかという過程は不明で,興味ある問題であった.
 
そこで筆者らは,フェノールと水の混合溶液を真空中に吹きだし,質量分析装置と波長可変なレーザーを組み合わせ,混合溶液に含まれている成分としてのフェノールと水分子の成分比の異なる集合体〔式で書くとPhn (H2O)m( n, m は0 ~ 10 程度)〕の存在とその電子スペクトルを測定し,各成分がどのような構造をとっているかを調べた.
 
この成果を1982 年の第1 回多光子イオン化分光のゴードン会議(アメリカ,コルビー・ソーヤーカレッジ)で報告し,予想以上の反響を得た.フェノール分子が水に溶けて水溶液となる過程と,フェノール分子どうしの集合体の構造をテーマに発表したもので,溶液の構造化学の基盤を目指した研究であった.
 
会議から帰国してすぐに,スタンフォード大学のRichardZare 教授から手紙をいただいた.ゴードン会議での筆者の講演内容を伝え聞き,研究成果を早急にまとめ,Zare 教授がエディターを務めていたChemical Physics Letters 誌に掲載したいと高く評価いただいたのである.
 
数日で論文をまとめ,論文送致から3 か月程度のスピードでこの論文が掲載された1).Zare 教授は,筆者と同じような水和問題を研究対象として考えておられたとのことで,あえて筆者らの論文をすばやく掲載されたZare 教授の公正さには,いまだに深い感銘をもっている.
 
後述するVan der Waals ポテンシャルの精密解析および水素結合でのプロトン移動反応機構の研究は,論文引用度を含め,高い評価を得たものであったが,筆者がこれら二つの研究から得た大きな成果は,
 
「ダイナミックな分子および分子間運動が,集合体の機能を創りあげている」
 
という事実を実感したことである.極端紫外光領域のサブミクロ結晶顕微分光装置の装置づくりに集中し,論文成果とは縁のない研究生活を送った.
 
筆者のその後の研究が,研究課題に適した自作の装置に依存したものとなったのは,以上の経緯からである.
 
理研での4 年半の研究生活ののち,物性研究所時代にお世話になった伊藤光男先生が東北大学理学部化学科の教授として転任されたのを機に,助教授として採用いただき,伊藤先生のリーダーシップのもとに共鳴ラマン散乱のプロジェクトを立ち上げた.当時,東京大学長倉研の助手であった吉原経太郎博士の指導で紫外パルスレーザーを,東北大学電気通信研究所の稲葉研の協力で時間分解光子測定装置などを,同僚の三上直彦博士,宇田川康夫博士と協同でつくり上げ,紫外領域での共鳴ラマン散乱研究で世界的に評価していただいた.
 
その間,アメリカのベル電話研究所に招聘され,現在では物質分析手法として広範に用いられている光音響分光法の開発に参加した.これらの研究から,新規な研究課題を達成するための装置づくりの重要さと,研究の独自性を発揮できる自由な研究環境の重要さを実感することができた.
 
Van der Waals 力と水素結合構造とダイナミクスベル研の研究環境に衝撃を受けた筆者は,緑豊かな仙台での研究生活を楽しみつつも,挑戦的なテーマを自己の責任で行うことを夢見ていた.そして,その転機は慶應義塾大学が工学部を理工学部に改変し,新設した化学科に筆者が招聘された1981 年に訪れた.
 
金沢大学に勤務されていた冨宅喜代一博士を共同研究者として,また理研の岩田末廣博士,ハーバード大学の博士研究員であった大峯 巌博士を理論部門のスタッフとして,物理化学部門を立ち上げた.
 
筆者と冨宅博士は,
 
① 水素結合分子の水和問題,
② Vander Waals ポテンシャルの精密測定,
③ 水素結合性二量体の水素結合のプロトン移動反応の機構解明,
 
イメージ 5という三つの研究テーマを採り上げた.これら三つの研究課題は,筆者らがナノ物質研究への第一歩としての理解を深めるための基盤的なもので,研究結果は国内外から予想以上の反響を得た.以下にその詳細を示そう.?
 
溶液中の水素結合フェノール(Ph)分子はベンゼン環にヒドロキシ基(OH)が付いた分子式C6H5OH で表される(図1 a).
 
常温の水100 mL( 約5 mol)には,約0.1 mol までのフェノール分子が溶け,一様な水溶液をつくる.図1( a),( b)から,フェノーa) OH b)図1 フェノールと水a)フェノール分子.b)水の水素結合ネットワーク.赤色が酸素,灰色が水素原子.
 
 
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