スピロピラン類は光照射により開環し熱反応で元へ戻る。これを学生実験に展開させようとするものである。
明確なソルバトクロミズムSolvatochromismが観察されて興味深い。フランス研究者が好むテーマであり、学生らにとっても速度論と対比させて面白いであろう。
フォトクロミック化合物(光機能性材料) / Photochromic Compounds (Optically Functional Materials)
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クロミズムは,物質の光吸収・発光などの光物性が外部からの刺激によって可逆的に変化する現象です。
クロミズムが発現する際には,分子構造の異性化が起きている場合がほとんどであり,屈折率や誘電率,酸化還元電位,融点などの物性も変化します。
光照射によってクロミズムが起こる現象がフォトクロミズムと呼ばれ,この現象を利用した調光材料,光記録材料,光スイッチ,機能性インクなどさまざまな分野で応用研究が進められています。
フォトクロミズムにおける構造異性化には,光幾何異性化(シス-トランス異性化)や光開閉環反応などがあります。
フィッシャーらは,スピロピラン化合物への光照射によって,フォトクロミズムが起こることを最初に報告しています。
スピロピラン化合物への紫外線照射によりスピロ炭素が光開環反応を起こし,分子の吸収波長が長波長側にシフトすることで可視部に吸収を持つ物質に変化します。
入江らは,ジアリールエテンのフォトクロミズムを最初に報告しました。ジアリールエテンもスピロピラン類と同様,光開閉環反応を起こすフォトクロミック化合物です。
スピロピラン類は光照射により開環(着色)するのに対し,ジアリールエテンは光照射により閉環(着色)する点で異なります。
また,スピロピランの開環化合物は熱的に閉環しますが(T型),ジアリールエテンの閉環化合物は熱的に安定であり,可視光の照射により元の開環化合物へ戻ります(P型)。
ジアリールエテンは光に高感度,高繰り返し耐久性を有するフォトクロミック化合物としてよく知られており,盛んに研究が進められています。フルギド類もP型のフォトクロミック化合物で,光照射により閉環反応を起こします。