硝酸セリウム(IV)アンモニウム
Wiki
4価のセリウムが3価となる時に強酸化性を示すことから、酸化剤として有機合成化学や、半導体産業でのウエットエッチングに利用されている(有機合成化学における反応例は英語版に詳しい)。
また、金属クロムを二クロム酸イオンに酸化・溶解することから、液晶ディスプレイのカラーフィルタやフォトマスクの製造工程で、ウエットエッチング液の主成分として使用される(集積度が低く、製品面積が大であるため、スパッタリングより適している)。
濃度管理を適切に行うと、金属クロムの薄膜上へフォトレジストにより描かれた微細な回路パターンを、精度よく顕像化することができる(セリウム(IV)は320 nm付近に吸収の極大を持ち、これによる濃度管理が可能)。
セリウム反応剤の有機合成への応用
大鳥幸一郎
1. はじめに
頂いた題で何が書けるだろうか。筆者自身セリウムの化学にはあまりなじみがない。
触媒量の硝酸セリウム(IV)アンモニウム(以下CANと略す)を用いるアルコール類の選択的酸化について少し研究した程度である。
そこでこの選択的酸化反応を軸とし,これとは逆の反応で
あるセリウム塩を用いるアルデヒド,ケトンなどのカル
ボニル基の選択的還元反応と対比させながらセリウム反
応剤による酸化ならびに還元反応ということでまとめる
ことにした。興味がかたよっており,セリウム反応剤を
用いた有機合成全般を網羅できないことをはじめにお断
りしておく。
有機合成における有機金属の登場は19世紀未から 20世紀はじめにかけてのGrignard反応剤の発見にはじまる。
その25年後にリチウム化合物,さらに25年後にはアルミニウム化合物一とつづき,1970年以降には種々の遷移金属化合物が導入された。最近では周期表のすべての金属について研究が行われているといってもよい。その中にあってランタニド系の化合物も例外ではない。
有機化学者にとってEu,Prの化合物はNMRのシフト剤
としてもなじみの深いものである。Sm,Ybについても
活発に研究されている1)。
としてもなじみの深いものである。Sm,Ybについても
活発に研究されている1)。
セリウム化合物は他のランタニド系化合物に比べて非常に安価で入手が容易である。たとえば
EuCl 33200円/g,
SmC l3850円/g,
YbCl3 1700円/g
に対して
CeCl350円/g,
Ce(SO4)250円/g,
CAN30円/g,
である。
セリウム化合物については,その強い酸化力が古くから注目され分析化学だけでなく有機化学の分野においてもよく用いられている。
1960年代の終りから70 年代のはじめにかけてCANを代表とする4価のセリウム化合物を用いる有機化合物の酸化反応が詳しく研究された2)。
アルコール類のカルボニル化合物への酸化, ベンジル位の酸化,スルフィドのスルホキシドへの酸化などである。
しかしこれらセリウム化合物を用いる反応はセリウムを用いない他の方法に比べて特にきわだって優れているとはいえず.有機合成への利用は限られていた。
セリウム化合物を用いる有機反応についてその後しばらくはあまり目立った動きはなかった。しかしながら,最近Lucheらによってアルデヒドとケトンが共存する系においてCeCl3・6H20触媒存在下にNaBH4を用いるとケトンが選択的に還元されるという従来にない興味ある方法が発表された。
これとともに酸化反応においても化学量論のセリウム化合物を用いるこれまでの反応に対し,触媒量のセリウム化合物と適当な酸化剤との組み合わせによる新しい方法が報告され,セリウム反応剤を用いる有機合成が再び注目をあびるようになった。
ここでは,まず4価のセリウム反応剤を用いる化学量論的酸化反応ならびに触媒量のセリウムによる酸化反応にっいて
(1) アルコール類の酸化,
(2) ベンジル位の酸化(3)キノンの合成
(4) 窒素,硫黄化合物の酸化
(5) その他の順に述べ,つづいてセリウム塩存在下のNaBH4によるα,β一不飽和カルボニル化合物の 1,2一還元,カルボニル化合物の官能基選択的還元さらに低
原子価セリウムによるカルボニル基のカップリング反応などの還元反応
原子価セリウムによるカルボニル基のカップリング反応などの還元反応
をとりあげる。