レコード人気、「針」の需要回復=活気づく生産現場-ナガオカ
レコード針の生産が回復しつつある。
音楽を楽しむ媒体がCD、インターネット配信に移り、針の需要は右肩下がりが続いていたが、近年のレコード人気の再来で、レコード針の最大手メーカーであるナガオカ(山形県東根市)の生産現場に活気が戻ってきた。
「”サブスクリプション”まるで分かんねぇ” ナガオカ針”しか記憶にねぇよ」。
桑田佳祐さんのシングルCD「ヨシ子さん」の歌詞には、定額聞き放題のネット音楽配信の「サブスクリプション」に対置する形で、針の生産でレコード文化を支えてきたナガオカが登場する。
ナガオカは1947年にレコード針の生産を開始し、生産量は全盛期に月産120万本を超えた。
しかし、80年代以降のCD普及によるレコード市場の縮小で、針の需要も急減。競合他社が生産を打ち切る中、同社も撤退を検討したが、
「一人でもレコードを聴く人がいる限り」
と踏ん張り、他の事業で赤字を補い、針の生産を続けてきた。
状況が変わるのは定額聞き放題のネット配信が本格化した2010年代に入ってから。
レコードを再評価するアーティストや消費者が増え、針の需要も増加。
一時は月産10万本を割ったナガオカの生産量は同20万本にまで回復した。長岡香江社長(44)は、レコード人気の再来を
「初めは退職した大人たちだけかと思ったが、若いファンも増えてきている」
と歓迎する。
レコード針は直径0.25ミリと極めて細い。
長期の使用に耐えるダイヤモンドを先端に使う一方、軸部分にはチタンを用いて価格を抑える。
針の装着などは手作業頼りで、熟練の技が必要だ。
ナガオカの世界シェアは8割以上に達し、同社には国内外のレコード関連会社から針の増産依頼が来ている。
(2016/10/29-07:40時事)