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2種類の宇宙線は脅威

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グルグル地球の周りを回ってばかりでは宇宙ではなくて地球飛行士である。
 
地球の外に人間は出れないのではないかと疑念が湧く。最大の脅威が宇宙線の存在であろう。月の話は避けて火星旅行の話ばかりするNASAである。
 
アームストロングが1969年7月20日、月面に着陸してから長い時間が経つ。1972年12月までに月に到達したのは合計12人というが。日本は2069年までに月にはいけるのであろうか?

     宇宙の放射線からクルーを守れ

We Fried Major Tom!
2017年5月19日(金)17時40分  newsweekjapan.jp
 
<宇宙飛行士の体をむしばむ放射線被曝のリスクを減らすために、サプリや防護服の開発が加速している>
 
放射線は至る所に存在する。自然来のものから核兵器の放射性降下物、医療用のエックス線までさまざまなものがあり、癌の原因になる一方、有望な治療法の1つにもなる。
 
宇宙にも大量の放射線(電荷を帯びた粒子)があふれている。そのリスクは宇宙旅行者にとって深刻な脅威だ。
 
地球の周囲には地球の磁場に捕らえられた放射線の帯「バンアレン帯」がある。バンアレン帯は内帯と外帯の2層から成るドーナツ状で、有害な宇宙放射線が地上に届くのを遮る役目を担っている。
 
月や火星に行くためにバンアレン帯を通過すると、そこから先は宇宙飛行士の体は放射線の脅威に対して無防備になる。
 
宇宙飛行士は宇宙空間で2種類の放射線と戦わなければならない。1つは太陽系外から飛来する「銀河宇宙線」。光速に近いスピードで移動する高エネルギーの粒子だ。
 
銀河宇宙線は大部分が陽子だが、より重いものもあり、DNAを傷つけ、変異を引き起こし、遺伝子転写を変える可能性がある。
 
遺伝子転写とはDNAの遺伝情報をRNA(リボ核酸)にコピーして全身の細胞に伝えること。
 
そのプロセスが変われば、不完全な指示が細胞に伝わり、そうした誤差は中・長期的には永続的な変異になりかねない。

火星旅行が現実味を帯びるなか、公的機関も民間企業も火星旅行のあらゆる側面についてテストと再テストを繰り返している。
 
だが放射線の問題を解決しない限り、そうした準備は水の泡になるだろう。
 
ウェークフォレスト大学再生医学研究所の研究チームは骨髄、脾臓、胸腺、リンパ節といった造血系器官に注目。
 
NASAの資金提供を受けて、火星ミッションで想定されるレベルの放射線が宇宙飛行士に与える影響を調べた。
 
原爆被爆者の研究から、造血系は人体でも特に放射線の影響に敏感だということが分かっている
 
と、同大学のクリストファー・ポラダ准教授は言う。
 
研究では、健康な30~55歳の宇宙飛行士から採取した造血幹細胞を火星ミッションと同程度の放射線に被曝させた
 
その結果、造血幹細胞の機能が大幅に低下し、癌のリスクが増大。特に進行の早い白血病のリスクが大幅に増大した。
 
銀河宇宙線は低レベルの放射線で、短距離の宇宙旅行であればさほど問題はない。ポラダによれば
 
月に行く場合の被曝量はごくわずか
 
だ。
 
一方、往復に最低2年はかかる火星ミッションの場合は、蓄積効果によって放射線の量も脅威も大幅に増大するという。
 
 将来は「宇宙天気予報」も

だが暗い話ばかりではない。研究チームによれば、ビタミンの日常的な経口摂取で宇宙飛行士を放射線の害から守れる可能性がある。
 
「放射線被曝前に細胞に投与しておけば、細胞の潜在能力の約75%を回復できるらしいサプリメントが見つかった」
 
と、ポラダは言う。錠剤は吸収率が悪いので、溶けやすくする方法を研究中だという。
 
体の内側ではなく外側から守る方法も開発中だ。イスラエルのステムラッド社は原子力発電所の作業員や、原発事故現場に駆け付ける消防士や警察官を放射線から守ることに特化した企業。
 
今回は宇宙飛行士用の放射線防護ベストを設計した。
 
特に放射線の影響を受けやすい臓器や組織や幹細胞を保護する設計になっているが、24時間常時装着しなければ効果がない。将来は宇宙飛行士一人一人に合った快適で柔軟性のあるベストを作ることを目指している。
 
NASAは18年に、スペースシャトルの後継機となるオリオンで無人の月周回飛行試験「探査ミッション1(EM-1)」の実施を予定している。
 
EM-1ではオリオンに乗せるダミー2体のうち、1体にステムラッド社の防護ベストを装着。
 
回収後の計測結果を比較して放射線防護効果を判断することになっている(ただし有人飛行試験に変更される可能性もあり、その場合、防護ベストを装着するかどうかは不明)。
 
NASAが懸念すべきもう1つの宇宙線は「太陽宇宙線」だ。
 
NASAの太陽系物理学部門の主任研究者エルサイード・タラートによれば、太陽フレアなどで高エネルギー粒子が大量に放出される「太陽陽子現象(太陽粒子現象)」と呼ばれる現象が生じている。
 
こうした宇宙天気現象によって放出された粒子は、中枢神経系にダメージを与え、運動機能と認知機能を低下させるなど、短期間に急性の影響を及ぼしかねない。長期的には癌のリスクを増大させる。
 
火星ミッションで浴びることになる宇宙放射線から宇宙飛行士をどう守るか、NASAはさまざまな対策を試している。
 
オリオンは宇宙線センサーを装備。太陽フレアなどの放射現象を探知するとクルーに知らせ、宇宙船の貨物室に避難させる。
 
「最終的な目標はこうした宇宙天気現象を予測すること」
 
だと、タラートは言う。
 
「宇宙天気予報が実現すれば、宇宙の仕組みを物理的に解明できる日は近いと期待している」
 
怖い宇宙放射線から宇宙飛行士を守るカギはバランスにある。つまり内と外、予測と防護の兼ね合いが重要だ。
 
NASAがどんな方法を取るにせよ、宇宙線の問題は解決しなければならない。
 
さもないと、宇宙旅行はお預けのままだ。
 
[2017年5月23日号掲載]

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