PPARδ
骨格筋の脂肪酸取り込み、輸送、酸化および脱共役タンパクといった脂肪酸代謝を調節する。
グラクソスミスクライン社の GW501516
PPARδ の強力なアゴニストAgonist(作動薬)であり、高脂肪食を与えられた動物への投与では、脂肪酸のβ酸化の亢進が認められた、即ち基礎代謝の促進する。
「ランニングの代わりになる薬」の実現が近づいている: 米研究結果
2017.5.23 21:3 Sankei・Wired
米ソーク研究所のチームが、運動したときに活性化される遺伝子を、実際には運動することなく活性化させる方法を発見した。
高齢者や病気の人など、走ることができない人にとって有益な薬の開発につながる可能性がある。
ランニングが健康にいいことは間違いない。
しかし、高齢者や肥満の人、運動能力に制限のある人といった「走ることができない人」は長い間、有酸素運動の恩恵を得ることができなかった。
少なくとも、これまでは。
カリフォルニア州にあるソーク研究所のチームは、通常ならランニングによって発現する遺伝プロセスを活性化させる方法を、運動しないマウスを用いた実験によって発見した。
『Cell Metabolism』に発表された研究は、心臓や呼吸器に疾患を抱える人々、2型糖尿病の人々に、ランニングの恩恵に(薬理的に)たどり着く希望を与えてくれるだろう。
「わたしたちは、トレーニングによって持久力を向上させられることを知っています」
と、研究の著者ロナルド・エヴァンスは言う。
「わたしたちの問いは、
『どうすれば薬をトレーニングの代わりにできるだろうか?』
というものでした」
持久力が70%アップ
「持久力を発達させる」とは、筋肉がグルコースのような炭水化物を、続いて脂肪を長時間にわたって燃焼させることで、有酸素運動を持続できるようになることを意味する。
先行研究においてエヴァンスのチームは、すでに「PPAR-δ」と呼ばれる遺伝子を改変したマウスが長距離ランナーになることを証明していた。
それらのマウスは体重が増えにくく、インスリン(血糖値を下げるホルモン)に対して高い反応を示した。すべて、通常なら走ることで得られる恩恵である。
その後チームは、「GW1516(GW)」と呼ばれる化合物がPPAR-δを活性化させて、体重の制御とインスリンに対する反応に影響を与えることを発見した。
新しい研究で研究チームは、マウスにより長い期間(8週間)、より多くのGWを処方した。
その後、化合物を与えられたマウスと通常のマウスの持久力を比べるために、トレッドミル(歩行装置)でテストを受けさせた。
その結果、通常のマウスが約160分持ちこたえたのに対し、薬の処置を受けたマウスは270分、つまり70パーセント長く走ることができた。
「運動なしに運動する」メカニズム
分子レヴェルで何が起きているのかを解明するために、チームはマウスの筋肉における遺伝子発現を分析した。
分析の結果、薬に対する反応によって975の遺伝子の発現が変化していたことを発見した(抑制・増加の両方を含む)。
発現が増加した遺伝子は、脂肪の燃焼を制御するものだった。これに対し抑制された遺伝子は、炭水化物を分解してエネルギーを生成するプロセスに関係するものだった。
言い換えれば、PPAR-δによって、グルコースが筋肉のエネルギー源になることが妨げられていることになる。恐らく、この糖を脳のために保存することが目的だろう。
「この研究が示唆しているのは、脂肪の燃焼は持久力を発揮させるためというより、グルコースをよりよく使うためのメカニズムであるということです」
研究の共著者、マイケル・ダウンズは説明する。
「PPAR-δは糖の代謝に関係する遺伝子を抑制して、グルコースが脳に行くようにします。こうして脳の機能を保護するのです」
「通常は、運動することでPPAR-δは活性化されます。しかしいま、同じことがトレーニングや身体的な負荷なしにできることが証明されました」
と、研究に協力した科学者のウェイウェイ・ファンは説明する。
次の一歩は、肥満や2型糖尿病にかかった患者での臨床研究を進め、彼らの体型を改善するための研究に応用することだ。