「SPERA水素」とは何か?
橘川武郎氏によると
「原油・天然ガス・石炭から取り出した水素(H2)を水素化プラントでトルエンと反応させて運びやすいMCH(メチルシクロヘキサン、常温・常圧では液体)に変え、それを日本などに運んで脱水素プラントにかけて水素にもどし利用する(その際、脱水素プラントで水素から分離されたトルエンは、水素化プラントへ移されて再利用される)という構想である」
という。水素貯蔵合金などは使いにくいのか?
この構想のポイントは、MCH化することで
「運びやすい水素」
「貯めやすい水素」
を実現した点にあり、この「使いやすい水素」を千代田化工建設は、「SPERA(スペラ)水素」と名づけている。
SPERAとは、ラテン語で「希望せよ」という意味をもつ言葉だそうだ。「SPERA水素」は、たとえばペットボトル状の容器に入れることも可能であり、使い勝手がいい「SPERA水素」が普及すれば、水素を活用したいという人類の希望は、文字通りかなうことになる。
水素のガソリン化ということであるらしい。
水素添加をしてして再び脱水素化か?
knak.jp/FYI/h2-hatuden
トルエンの水素化反応
chiyoda-corp.com/technology/files/201301_okada_yasui.pdf
Wiki情報
トルエンの水素化により生じ、触媒による脱水素化で水素を取り出せることから、有機ハイドライドの一種として水素の安定的な貯蔵・輸送手段としての研究もすすめられている。
理論上の水素貯蔵密度は47.0kg-H2/m3であり、水素ガスは1/500の体積のMCHとなる。貯蔵密度はベンゼン←→シクロヘキサン(56.0kg-H2/m3)やナフタレン←→デカリン(65.4kg-H2/m3)に比べやや劣るものの、液体の状態を維持できる温度範囲が広い利点を持つ。
千代田化工建設はMCHの脱水素触媒を開発し、商業ベースでの水素の供給の実証試験に成功した。日立製作所は国立極地研究所より、南極の昭和基地での風力発電機とメチルシクロヘキサンを組み合わせた水素発電システムを受注した。
カギを握るのは水素サプライチェーンの構築
gendai.ismedia.jp
今日、経済成長に伴う化石燃料の消費増大による大気汚染や地球温暖化が問題となる中、ハイブリッド車が誕生し、電気自動車の存在も改めて注目されるようになった。そして、燃料電池車の市販開始である。
「歴史は繰り返すというが、移動手段の多様化は100年ほど前と同じような状況になっている」
(加藤副社長)という。蓄電池技術の進化や、車というメカ(機械)とコンピューター技術の融合など「技術革新」がモビリティーの多様性を加速させている。
燃料電池車に限ってみると、燃料となる水素は燃えるために危険であり、気体として管理するのは難しかったが、管理技術が進化したことも市場投入を早めた。
たとえば、プラント建設大手の千代田化工建設がノウハウを持つ「SPERA水素」。
これは、水素を石油の主成分であるトルエンに溶かすことで、常温常圧でありながら水素を体積ベースで500分の1に圧縮可能とした技術だ。これによって、タンカーやタンクローリなどこれまで利用してきたインフラを活用しながら水素を大量にかつ低コストで輸送することが可能となった。
また、このトルエンに溶かした水素は「メチルシクロヘキサン」という液体になるが、従来技術ではこの液体からは水素を取り出せなかったが、触媒などのナノテクノロジーの進化によって取り出しが可能となった。この2つの技術によって、「水素サプライチェーン」が実用化した。
20世紀初め、ガソリンの精製法の進化など周辺産業の発展により、ガソリン車が「主役」となったのと同様に、新しいエネルギー供給のサプライチェーン構築が、燃料電池車普及のカギのひとつになることは間違いないであろう。
また、2009年からはガスから水素を取り出す「家庭用燃料電池」の普及が始まり、消費者が「水素」という言葉を目にするようになったことで、水素への抵抗感が減少しているとも見られる。
エネルギーは勧善懲悪では決まらない
ホンダも燃料電池車の開発に力が入っており、トヨタとほぼ同時期に、航続距離や価格も同様の新型車を国内に投入する計画。すでに昨年秋に開催されたロサンゼルスモーターショーでコンセプトカーを初公開している。
政府は今年4月に閣議決定した「エネルギー基本政策」の中で、燃料電池車や水素ステーションの普及を謳っている。資源エネルギー庁燃料電池推進室によると、2017年までに燃料電池の利用拡大を図り、2020年代後半に水素発電を普及させ、2040年ごろに水素供給システムを確立させる計画だという。
当面は、水素を燃料とする燃料電池車も普及すると同時に、内燃機関とモーター併用のハイブリッド車、電気自動車も併存していくと見られる。そして、新技術のモビリティーに対抗するために、ガソリン車やディーゼル車の技術も益々進化していくだろう。
ガソリン車やディーゼル車は燃料を燃焼させたエネルギーの半分以上は捨てており、その捨てているエネルギーをいかに有効に利用して燃費効率を高めていくかといった技術開発も重要になる。
トヨタやホンダのように資金力があると、全方位的にすべての技術に取り組めるが、財務力の乏しい自動車メーカーは、限られた原資をどこに投入していくかの戦略眼が必要だ。足りない技術を補完し合うための提携も増えるかもしれない。その際に重要なるのは、技術開発力だけを誇るのではなく、その技術が社会や消費者にどのような価値を生み出すのかという点ではないか。
今の日本では東日本大震災を契機にメディアなどでは原子力問題が大きく取り上げられ、その対抗軸として太陽光発電などの自然エネルギーが話題となるケースが多いように映る。しかし、次世代のエネルギーは「社会的にあるいは経済的に何が正しいか」といったような一刀両断的な考え方で決るものではないとも感じる。
イメージ先行の勧善懲悪的に決めるものでもない。省エネなど環境負荷低減、エネルギー安全保障、合理性のある産業振興、コスト、関連技術の進歩など様々な要因が複雑に絡み合いながら、最終的には消費者が決めるものではないか。その選択肢の幅を狭くしてはいけない。
歴史を振り返り、かつ、燃料電池車という新しいモビリティーの誕生を通じて感じた筆者の率直な感想だ。
「トルエンに結合して水素を固定化する技術は以前から確立済みだった。これまで実用化できなかったのは、MCHに固定した水素を再びガスの形に分離する効率的な技術(脱水素化技術)がなかったからだ」 toshiyam.tumblr.com/post/57702562820/spera
「1980年代にカナダの水力発電でつくった水素を欧州に運ぶ『ユーロケベック計画』で脱水素技術の開発に挑んだが、できなかった。私は2002年に脱水素化の技術を開発しろと命じられ、ほぼ10年をかけて実用レベルの技術を開発できた。ちなみにスペラはラテン語で『希望せよ』という意味だ」
――脱水素化反応の触媒が開発のポイントですか。
「従来の脱水素化触媒は寿命が課題で、2~3日で使えなくなった。私たちが開発した触媒は1年(8000時間以上)は十分使える。白金の触媒で、自動車排ガス浄化用触媒と同じく、劣化したら回収して再利用が可能だ。初期投資はやや高いかもしれないが、運転コストは安い触媒だ」
「白金の粒子をおよそ1ナノ(ナノは10億分の1)メートルまで小さくし、(触媒反応の土台になる)アルミナの上に均一に分散させてつけた。
MCHの分子の大きさは0.6ナノメートルくらいなので、白金粒子はほぼ分子と同じサイズだ。まさにナノサイズの触媒技術で、世界でもほかに例がないと思う」
「触媒にはこのほかにもいくつか工夫がしてある。基本的な構造は論文などで公表したが、容易にはまねはできないはずだ」