天然物有機化学の先生が植物にモーツアルトを聞かせて発育状況を調べる研究をしていたが、どうなったのか?植物が音楽を聴くという表現はあまりいただけない。聴覚がないのだから。
ただし、風の揺れなどとか振動には反応するのであろう。防御として。
また日本人以外は秋虫の音を雑音としか捉えることができません。風流として感じた古代日本人とは、すごいものです。
後半の植物が音でコミュニケーションという研究だが、エチレンなどのChemicalなものが大半だと思う。
植物は虫の咀嚼音を“聞いて”いる?
2014年07月10日 mainichi.jp
シロイヌナズナ(学名:Arabidopsis thaliana)は、モンシロチョウの幼虫(左上)が葉を食べる音を“聞く”と、辛味成分を含む油を分泌して撃退しようとする。
Photographs by Richard Becker / Alamy; (inset) Roger Meissen 植物が環境の変化に反応していることは古くから知られている。
光や気温に反応を返すほか、触られると反応するものもある。さらにこのほど、シロイヌナズナは音を“聞いて”いるとする研究結果が発表された。
シロイヌナズナは可憐な花を咲かせるアブラナ科の植物で、英語ではネズミの耳になぞらえてマウスイヤー・クレス(mouse-ear cress)とも呼ばれる。
この植物はモンシロチョウの幼虫が葉を食べる際の振幅の大きな振動に対して、堅固な防御反応を示していることが、ミズーリ大学の2人の研究者によって明らかになった。
この研究は、音響分析と化学分析を組み合わせて、植物が周辺環境の音のうち、生態学的に重要なものに反応していることを初めて明らかにしたものであると、ミズーリ大学植物科学科の上級研究員を務めるヘイディ・アペル(Heidi Appel)氏は言う。
アペル氏は同大学生物科学科のレックス・コクロフト(Rex Cocroft)教授と共同で研究を行い、レーザーとひときれの反射素材を用いて、チョウの幼虫が葉を食べる際の振動を記録した。
これはシロイヌナズナの葉を、1万分の1インチ程度上下させるにすぎないわずかな振動だ。その後、実験用のシロイヌナズナを2グループに分け、一方には2時間分の振動の記録を聞かせ、他方は静かな環境に置いた。
すると、咀嚼の振動の記録にさらされたシロイヌナズナでは、辛味成分を含む油の分泌量が増加した。これは虫の攻撃に対する防御反応と考えられる。
振動が
「引き金となって、その後の攻撃に対する備えを促した。咀嚼の振動という情報をあらかじめ得ていれば、いち早く堅い守りを示せる」
とアペル氏は言う。
またシロイヌナズナは、特定の振動にしか反応を返さない。最初の実験のすぐ後に、アペル氏らは似たような振動に植物をさらしている。風や、シロイヌナズナにとって害をもたらさない虫による振動では、特に反応は得られなかった。
「特定の周波数の音、つまり特定の高さの音にだけ効果があるといった単純な話だとは考えていない。(シロイヌナズナは)咀嚼の振動に反応する一方で、同じ周波数でも虫の鳴き声には反応しなかった。このことから、植物の音響受容は、特定の音高に反応するというような単純なものではないことが窺える」
とコクロフト教授は言う。
◆小さな植物に大きな“耳”
今回の研究は、特定の植物とそれを食べる特定の虫の関係に焦点を当てたものだが、その結果は他の植物にも広く当てはまるのではないかとアペル氏らは予想している。
研究の次の段階は、別の種類の植物とそれを食べる動物でも同じ現象が見られるかを確認することだ。今回の発見の農業分野への応用を検討するには時期尚早だと2人は言う。
植物にとって何が有益かを私たちは完全には理解していないということを裏づける興味深い情報は近年増えており、アペル氏らの研究結果もそれに連なるものだとウィスコンシン大学マディソン校のジョン・オロック(John Orrock)准教授(動物学)は言う。
オロック准教授は、植物とそれを食べる動物との間の「恐怖の生態学」を専門としており、カタツムリのぬめりが植物の防御系におよぼす影響について研究を発表している。オロック准教授は今回のミズーリ大学の研究が、植物行動学の分野において「興味深く多彩な一連の設問を新たに切り開く」ものと考えているとのことだ。
「植物が反応を示すと分かっている情報の形はたくさんある。光に注意を向けていることは分かっているし、周辺の土壌や大気に含まれるさまざまな化学物質に注意を向けていることも分かっている。(中略) 植物はいかなる瞬間にも、さまざまな情報を考慮している。今回の研究によって、音による情報も、植物が考慮するもののひとつであると分かった」
とオロック准教授は言う。
「つまり植物も、ある意味で音を“聞いて”いるのだ」
咀嚼音へのシロイヌナズナの反応に関する今回の研究は、「Oecologia」誌オンライン版に7月2日付けで掲載された。
Emma Weissmann, National Geographic News
植物は隣の植物の声を聞く?
Ker Than
for National Geographic News
May 8, 2013
for National Geographic News
May 8, 2013
最新の研究によると、隣の植物の音を「聞いた」植物は、自ら成長を促進させるという。
音響信号を利用してコミュニケーションを取っている可能性があるようだ。
研究チームの一員で、西オーストラリア大学の進化生態学者モニカ・ガリアーノ(Monica Gagliano)氏は、
「 植物が“良き隣人”を認識することを実証した。このコミュニケーションは音響的な信号の交換に基づくと考えられる」
と話す。
つまり、植物は化学物質のにおいをかぐ「嗅覚」や、隣人に反射した光を見る「視覚」に加え、周囲の音を聞く「聴覚」も備わっている可能性があるというのだ。
「植物は、私たちの想定よりもずっと複雑な生物体だ」
とガリアーノ氏は話す。
◆良き隣人
ガリアーノ氏の研究チームは、バジルなど、雑草や害虫を防ぐ「良き隣人」の隣にトウガラシを植える実験を行った。すると、単独で植えたときよりも早く発芽し、健やかに成長することが確認された。
光や化学物質の信号を交換できないように、黒いプラスチックで隣の植物と遮断した場合でも同じ結果を得た。
つまり、トウガラシの若木は、隣の植物の種類を認識し、それに応じて成長しているようなのだ。ガリアーノ氏は、
「意図的かどうかは別にして、植物細胞の内部で生成される音響振動がカギを握っているのだろう」
と推測する。
「音というのは、媒体の制限が少なく、非常にしっかりと伝わる。したがって、振動に基づくコミュニケーションは最も簡単で直感的な方法といえる」
ガリアーノ氏の研究チームは昨年の研究で、トウガラシが、ハーブの一種のフェンネル(ウイキョウ)など、ほかの植物の成長を阻害する化学物質を放出する「悪しき隣人」に囲まれたときにそれを認識することを実証しており、今回の研究はその続編に当たる。
◆植物語?
ただし、植物が音に基づくコミュニケーションを行っていたとしても、意図的なものなのか、「植物語」のような共通の方式が存在するのか、詳細については一切わかっていない。
「それでも、“互いに影響し合っている”というデータがここに存在する。すべてを説明できないが、その事実は変えられない」とガリアーノ氏は話す。
「仕組みはまだ不明だが、音に基づくコミュニケーション能力は、おそらく植物の間で広く普及していると考えられる」
同氏によると、音響信号は、植物が隣の植物を識別し、その活動を予測する上で簡単かつ素早い方法だという。
化学物質信号の場合、特別な分子と受容体を作り出すことが必要となり、資源の面でコストがかかる。
◆成長促進
アメリカにあるカリフォルニア大学デービス校の生態学者リチャード・エバンス(Richard Evans)氏は、今回の研究を受けて次のように話す。
「詳細な分析が必要だが、非常に興味深い成果だ。未知のコミュニケーション手法の存在が確かめられた」
ガリアーノ氏は、
「コミュニケーションの秘密が解明できれば、人類にとっても実用的なメリットがある」
と話す。
例えば、農業で音を利用すれば、特定の植物の成長を促進したり、抑制したりすることが可能になり、化学肥料や農薬などが不要になるかもしれないという。
研究チームの一員で、同じく西オーストラリア大学に所属するマイケル・レントン(Michael Renton)氏は、
「ただし、音の影響の規模はかなり小さいかもしれない」
と話す。
「発芽速度をほんの少し早めるだけであれば、わざわざ音楽をかけるのは経済的に割に合わない可能性がある。今後の研究で確かめていきたい」
今回の研究結果は、「BMC Ecology」誌オンライン版に5月7日付けで掲載されている。