硫化水素H2Sが生体毒というのは皆さんご承知でしょう。若者のH2S自殺も社会面で多く見られて困惑したものである。H2Oは生体の70%というのに酸素Oと水素Sでは偉い違いですね。どこからこの違いが出るのか。
一方で、微量なH2SはCN,CO同様細胞内や細胞間のガス性の情報伝達物質の側面も注目されるようになった。
ガス分子1個としてどのように作用するのか興味深い。たとえば細胞液中でH2Sの酸塩基反応は生じないのであろうか?
近着のDoJinNo.148に掲載の大分大の木村さんの話によると、1989年に脳内に高濃度のH2Sが存在している可能性が示唆されたという(Biochemical Pharmacology, 1989, 38, 973-981)。1986年には海馬のNMDAレセプターのシグナルを増幅する、1997年に平滑筋を弛緩させることが木村さんにより報告された。
糖尿病のB細胞死抑制などが観察されている。
これらのガス性分子はそれぞれ特異的な酵素が担っているらしい。D-システィンはL-体より80倍効率よく硫化水素H2Sを産生するのも面白い。
最後になりましたがH2Sでなぜ即死するかは、下記記事を参考にしてください。
廃棄物タンクで2人死亡 佐賀・唐津、硫化水素か
2013.9.19 00:46 産経
廃棄物処理タンク内で男性作業員が倒れていた水産加工会社「金子産業」=18日、佐賀県唐津市中瀬通
18日午後6時半ごろ、佐賀県唐津市中瀬通の水産加工会社「金子産業」の廃棄物処理タンク内で、男性作業員2人が倒れているのを社員が見つけた。佐賀県警や唐津市消防本部によると、2人は意識不明の状態で病院に運ばれたが、死亡した。
タンク内で有毒な硫化水素が検知され、同社によると、午後7時半ごろの測定では濃度が安全基準(10ppm)の約6倍に達したという。付近は一時立ち入り禁止となった。
佐賀県警によると、死亡したのはいずれも唐津市に住む社員の森秀樹さん(48)と吉永庄二さん(68)。
タンクでは加工した魚の廃棄物などを貯蔵していた。2人は底にたまった深さ約1メートルの汚水に浮いた状態で発見された。
タンクは高さ約3メートル。駆け付けた消防隊員は、タンク上部にある出入り口から送風機で風を送り込み、有毒ガスを排気してから2人を運び出したという。
生体中の硫化水素
ガスそのものではなくてHS-イオンとして作用する可能性も?
ガスそのものではなくてHS-イオンとして作用する可能性も?
九大、西田基宏さんの話
硫化水素の心筋保護作用の分子メカニズム
硫化水素(H2S)は、NOや一酸化炭素(CO)に続く第3の内因性ガス分子として最近注目を集めている。
H2SはKATP channelの開口活性化やホスホジエステラーゼの阻害作用をもつだけでなく、酸化ストレスを伴う細胞障害を抑制することも知られているが、その分子機構はよくわかっていない。
H2Sの酸解離定数(pKa)は6.7と低く、pH7.4の培養液中ではH2Sの80%近くがHS-として存在すると考えられる。
そのため、H2Sはガスではなく、求核性の高いイオン(HS-)として親電子物質と反応することで親電子シグナリングを抑制する可能性が考えられる。
特に心臓ではH2S産生酵素であるcystathionine β-synthaseやcystahionine γ-lyaseがほとんど発現していないことから、心臓組織におけるH2Sレベルは極めて低いと考えられる。
Endogenous H2S synthesis and metabolism
(pancreapedia.org/molecules/hydrogen-sulfide)
Apart from environmental and bacterial sources, mammals too are capable of synthesizing H2S.
Endogenous levels of H2S have been measured in the circulatory system with rat serum being reported to contain ~46uM H2S . H2S synthesizing activity has also been shown in rat tissue extracts of liver, kidney, heart, brain, small intestine, skeletal muscle and pancreas .
H2S can be hydrolyzed to hydrosulfide and sulfide ions.
In an aqueous solution, about one third of H2S remains undissociated at pH 7.4. H2S is permeable to plasma membranes as its solubility in lipophilic solvents is ~fivefold greater than in water
.
Endogenous H2S can be synthesized via the desulfuration of cystine/cysteine by
three enzymes; Cystathionine beta synthase (CBS; EC 4.2.1.22), Cystathionine gamma Lyase (CSE; EC 4.4.1.1) and mercaptopyruvate sulfurtransferase (MST; EC 2.8.1.2) MST is found both in the mitochondria and cytosol while CBS and CSE are mainly produced in the cytosol. .
Among the 3 enzymes, MST contributes the least towards endogenous H2S production while CBS seems to be the main H2S-forming enzyme in the CNS and CSE is the main H2S-forming enzyme in the cardiovascular system .
In mice, CSE expression has been detected mainly in the liver and kidney, and in lower abundance in adipose tissue, stomach, small intestine, brain, heart and lung.
CBS expression has been found in all parts of the brain, liver and pancreas .
In mouse pancreas, CBS is ubiquitously distributed but CSE was found mostly in the exocrine and in very small amounts in the freshly prepared islets.
However, high glucose increased the CSE expression in the beta-cells .