大学当局も劣化してきましたね。
「灰色」に見える施設、大学側は「茶色」と主張
2015年07月31日 13時56分 読売
同志社大京田辺キャンパス(京都府京田辺市)に、「色とは何か」を考えさせる建物がある。
茶色のレンガ調の校舎が立ち並ぶキャンパスで、異彩を放つ灰色の施設。大学側はこれを「茶色」と主張する。なぜなのか。
◇「市の規制範囲」◇
3月に完成した同キャンパス初の宗教施設「同志社京田辺会堂」。礼拝堂「言館(ことばかん)」と、同志社の創設者・新島襄の関連資料などを展示する「光館」から成る。外壁はタイル約11万5000枚に覆われている。
キャンパス内の建物は、外観の統一感を保つため、市が2004年に定めた「地区計画」で、外壁や柱の色彩を
「自然石またはレンガによる茶色を基調」
と規定。
地区計画は、まちづくりのため都市計画法に定められた制度で、ルールに合わない建築物には、市が是正を勧告できる。
大学側は、同施設の設計者を決めるデザインコンペを実施。提案条件に
「地区計画の制限については縛られ過ぎることなく」
という文言を盛り込んだ。
「力量と適性を見極めるため、発想を妨げないようにした」
(岩田喬・広報部長)といい、応募のあった379作品から、13年2月、建築家の柏木由人さんの案を採用した。
市の担当者は、大学側から示されたデザインの図案で、外壁の色が灰色だったため、「規制に違反する可能性がある」として、大学側や設計者と協議。
「茶色に近づける」という理由付けのため、色彩の国際的な指標「マンセル値」の色相(色合い)が、茶色の傾向を示す「黄赤系」の塗料を吹き付けたタイルを、全体の55%に使うことで折り合った。
ただ、塗料の彩度(鮮やかさ)を低くしたため、視覚的にくすんで見え、やはり灰色のような色合いになった。全ての色は彩度を落とすと灰色に近づく。
同大学施設部の山下利彦部長は「設計者は、周囲の校舎と調和しつつ、目を引く色を目指したと聞いている。あくまで茶色を基調としており、規制の範囲内だ」と説明する。
◇学生に戸惑いも◇
学生の目にはどう映るのか。心理学部1年の学生(20)は「どう見ても茶色には見えないが、色の仲間がそうだと言われればそうなのかも」と戸惑い、生命医科学部3年の学生(21)は「ほかの建物より目立たせる狙いは当たっている」としながら
「指標が茶色だから茶色という理屈は無理がある」
と話す。
建物の外壁に関する規制では、京都市が色が派手になりすぎないよう、10種類の色ごとに彩度を定めている。京田辺市は同大学内の地区計画で「茶色」とするだけで、彩度を細かく規定していなかった。
市計画交通課は
「同志社側が『デザインの根本的な変更はできない』と主張したため、折り合える範囲を探った。様々な利害関係者が絡む市街地の地区計画と異なり、キャンパス内は市民の出入りも少なく、大学の意向を尊重していいと判断した」
と説明している。
京都府立大の宗田好史教授(都市計画)の話
「施設と景観との調和は取れているように見えるが、無理に茶色と言いくるめているのは不自然。景観規制の指標の中でも、色彩は高さなどと比べ未成熟であいまいな点があり、改良の余地がある。地区計画の規制内容を決めた経緯や目的も踏まえた上で、大学と行政が協議した方がよかった」
◇マンセル値=色相(色合い)、明度(明るさ)、彩度(鮮やかさ)の3項目で色を数値化した指標。色相は10種類の基本色の頭文字をとったアルファベットと0~10の数値で、明度は0~10、彩度は0~14程度の数値で表す。同志社京田辺会堂のタイルの彩度は0.5に設定されている。
(上野将平)