cyanotype写真法は今流行りの黒板アートのような濃淡で表現できる素晴らしさがある。歴史のある化学そのものを利用した写真法である。
シュウ酸のFe3+錯体(トリス(オキサラト)鉄(III)酸カリウム)が光還元されやすいことを利用している。
トリス(オキサラト)鉄(III)酸カリウムの光反応は荻野和子先生の十八番である。夫の荻野博先生はお元気か?学会発表でコバルト(III)錯体を利用したロタキサンの独創的な研究であったが、将来どんな役に立つのか?などというバカな質問をした者がいた。
この研究は後年、Stoddartらに認められた。
ir.library.tohoku.ac.jp/re/bitstream/.../1/KJ00002359377.pdf
昔は日光写真というのが子供らに流行った。銀塩を使用していたらしい。先代の人々はかなり化学的な環境で育っていたのである。露出に30分~1時間もかかるのでスマホ時代のKidsはどうかな?
*日光写真
kotobank.jp/word/日光写真-592232
写真の印画紙にネガや図面などの原稿を密着し,太陽光で焼き付けて写真を作る方法およびこれによって得られる写真をいう。
mainichi.co.uk/cyanotype/index
一般に銀塩を主体とする写真感光材料を使って写真を作る過程は,露光,現像,定着の処理を必要とするが,日光写真では強い光源を使って直接画像を作り現像の過程を省いている。
このような写真過程を焼出しprint‐outと呼び,現像を経て画像を作る過程developing‐outと区別している。
焼出しによって得た写真像は定着の処理を省いているため,画像に強い光が当たると全面黒化して画像は消失する。
葉っぱで日光写真
web.canon.jp/technology/kids/experiment/e_01_07
青写真(英: cyanotype)
Wiki
サイアノタイプ、日光写真ともいい、鉄塩の化学反応を利用した写真・複写技法で、光の明暗が青色の濃淡として写るためこう呼ばれる。
工学史上、機械図面や建築図面の複写(青図、blueprint)に多用されたため、「設計図面」の意味で使用されるようになり、また、これから転じて、将来の計画などを指して「人生の青写真」あるいは「組織改革の青写真」などと言うこともある。
ジアゾ式複写機の普及によって、実務には使われなくなっていったが、印刷・複写業の法人名にその名残は多い。
ハイデルベルクの街並み(1881年撮影)
鉄イオンは、光(主に近紫外線)によって3価から2価へ還元される性質を持つ。
このことを利用し、鉄(III)塩を塗った感光紙を露光し、原稿の濃淡を鉄(III)イオンの濃淡に変換して潜像を形成させる(原稿の濃い部分に3価が多く残る)。
その後、鉄(III)イオンとは反応しないが、鉄(II)イオンとは紺青(安定した濃青色の顔料)を生成するヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム(赤血塩)で現像すると、光の当たった部分に生成した2価の鉄イオンと反応するので、青地に白の複写(陰画)が得られる。
通常は青写真といえばこれを指す。
4 Fe2+ + 3 K3[Fe3+(CN)6] → Fe3+4[Fe2+(CN)6]3 + 9 K+ + e-
一方、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム(黄血塩)で現像すると、逆に白地に青の複写(陽画)となる。
ただし、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムは鉄(II)イオンとも反応して青白色の物質を生成するため、コントラストが低くなる。このため、陽画を得るためには陰画を原稿としてもう一度陰画を作成することが行われたが、精度が低下するため実用図面ではもっぱら陰画が利用された。
感光紙の鉄(III)塩としては、シュウ酸鉄(III)アンモニウムやクエン酸鉄(III)アンモニウムが用いられ、また、あらかじめ現像液と混合して感光紙を作成すると、現像は水洗いだけで済む(下記)。
陰画のレシピ
クエン酸鉄(III)アンモニウム150gを水600mLに溶解した溶液と、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム80gを水400mLに溶解した溶液を調製した後、全量を混合して半日静置する。ろ紙5Aで沈殿物を除いた後、上質紙になるべく均一に塗りつけて暗所で乾燥させると、感光紙となる(遮光保存が必要なので、黒い紙やアルミ箔で挟んで保管する)。
原稿の厚さにもよるが、直射光なら3分程度で露光が完了する。感光後は水洗いして乾燥し、1%の塩酸または酢酸に浸して再度乾燥させると、青地が鮮やかになって耐久性が増す。
あらかじめ調製液に二クロム酸カリウム5gを添加しておくと感度が向上し、白線が鮮明になる。クエン酸塩は褐色のものより緑色のものが感度が高く、シュウ酸塩を3gほど添加しても、感度向上と耐久性増加がなされる。
陽画のレシピ
乳鉢にアラビアゴム4gを採り、水20mLを加えて溶いたものに、クエン酸鉄(III)アンモニウム3gを水6mLで溶いたものを加えて混合する。次いで、塩化鉄(III)2gを水8mlで溶いたものを加え、さらに混合したのち、上質紙に塗布してすばやく乾燥させると、感光紙となる。
感光後にヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム20%溶液を塗布または液中に浸して現像し、よく水洗いする。1%の塩酸で洗浄定着させ、水洗乾燥させる。
話はまたまた飛ぶが、海にFe3+塩を播こうなどという研究もあったが。