京都の紅葉、太陽活動や温暖化に影響 1千年超分析で推定
2017年11月03日 12時10分 京都新聞
京都の紅葉(カエデ)の見頃は過去1千年超の中でどう変化してきたか。
大阪府立大の青野靖之准教授(農業気象学)は、平安貴族の日記などを分析し、紅葉の時期に関係する秋の気温推定を進めている。
見頃が早い年が多かった15世紀半ばや19世紀初頭は低温期だったとみられ、太陽活動が周期的に弱かった影響も考えられる。
戦後は見頃が遅くなる傾向があり、温暖化の影響が大という。
「西山の辺り、紅葉を見る」
999年10月28日(太陽暦換算)の藤原道長の御堂関白記には、こう記されている。
1226年11月7日の藤原定家の明月記には「紅葉之盛」とある。
こうした日記や明治以降の新聞を基に、918~2012年の間で計503年分の紅葉日データを収集。具体的には
(1)紅葉の盛り
(2)紅葉を見た
(3)紅葉した枝を進上した
(2)紅葉を見た
(3)紅葉した枝を進上した
-記述と、
(4)紅葉が詠まれた詩歌を集めた。
同じ年に複数の記述がある場合は、盛りを明記した(1)から順に選んだ結果、(1)236年分(2)203年分(3)28年分(4)36年分が得られた。
15世紀と17~20世紀は50年超のデータが集まり、紅葉日は11月16日の前後10日間を中心に推移した。
さらに、まだ温暖化の影響が少なかった1896~1925年に実際に観測された気温と紅葉日の関係を基に、それ以外の時代でも紅葉日から気温を推定できる数式を作成。10月の推定平均気温をグラフ化した=表。
おおむね14~17度台で推移する中、15世紀半ばと19世紀初頭に比較的低温期がみられ、それぞれ太陽活動が周期的に弱まった「シュぺーラー極小期」「ドルトン極小期」にあたるという。
また、戦後は見頃が11月下旬になる年が増え、「都市のコンクリート化などによる温暖化の影響」とみる。
青野准教授は、京都のヤマザクラの満開日なども分析し、春の気温の変遷を推定。紅葉と同様、太陽活動が弱まると気温が低くなる傾向があったという。
「1千年前からの日記が脈々と残る京都でしかできない調査。太陽活動の盛衰がこれだけデータ的に現れるとは予想外だった」
と話す。
過去の紅葉日などのデータは同研究室のホームページhttp://atmenv.envi.osakafu-u.ac.jp/aono/で公開している。